第26話 長州五傑(長州ファイブ)

1865年。薩摩藩は新納久脩(新納中三)、五代友厚、松木弘安(寺島宗則)の3人から成る外交使節団を、町田久成、森有礼ら15名の留学生と共にイギリスに派遣した。

使節は元治2年(1865年)3月22日、薩摩国串木野羽島(鹿児島県いちき串木野市)から出航。

記録によれば、松木は、ローレンス・オリファントを通じてイギリス外相のラッセル伯に会っている。

薩摩は元治元年六月には、開成所が設置され、陸海軍の砲術・操練・兵法・築城術・天文・地理・数学・測量・航海・機械・造船・物理・化学・医学などが教授され、その目的は「武備十分相調」にあるとされた。

またこの年から施条銃を輸入している。

 こうして前藩主、島津斉彬の死後、一時後退したと思われた開化政策が、ふたたび大規模に推進されてきた。



「What about Earl Russell? (ラッセル伯はなんと?)」

パーカーはこの日、紅茶を啜りながら鉄を始めとしてお珠、美星、ロザリーに向き合っていた。

和装姿で胡坐座りで紅茶を啜る姿は遠目から見れば、京都のどこにでもいる老人に見えた。

「It seems that international students from Japan have decided to enter the University of London and study their respective subjects. (日本からの留学生たちはロンドン大学に入り、それぞれ目的の学科を習うことになったようです)」

鉄之助は商会を通じて届けられた状況を読み上げる。

(ロンドン大学かぁ、超名門だよなぁ)

鉄之助は読みながら苦笑いを浮かべた。入学できただけでもすごい。そう思ったのだ。そして、自分には入学すらできないだろうとも考えた。

「University of London… (ロンドン大学のぅ)」

(よくぞ入った…と言うべきなのかもな)

しかしパーカーは口には出さない。

顔にはシニカルな笑みが浮かんでいるだけ。

鉄は商会からの手紙を閉じる。

「本当にヤバイのは長州でしょうね」

「薩摩もヤバイんじゃないのかい?」

お珠が質問した。

「薩摩は、いずれ失速します。長州からでた長州五傑こそ気をつけなければ」

「土佐はどうだい?」

今度は、美星が質問する。

「土佐は…身の危険は感じますが、坂本と岡田以蔵だけマークします」

ぶるりと鉄が身震いした。坂本龍女が舌なめずりするさまを連想して

そして、睾丸がヒュンと上に逃げるかのように引っ込んだ。

「幕府は?」

ロザリーも質問を投げる。

「本当に怖いのは会津と新選組です。永倉、斎藤、沖田、土方、それに会津魂が危険です」

「what is Aizu-damashii?(会津魂?)」

ココでパーカーが会津魂について聞いた。

「It is a stubborn Bushido spirits. Is it the attitude that dying is even a virtue?

I can't agree (頑なな武士道スピリッツです。死ぬことが美徳さえ思っているような心構えですかね?賛同はできませんが)」

鉄はため息をついた。

「まあ、敵だらけってことは確かだねぇ」

「そのぶん銃が売れますよ。飛ぶように」

鉄が笑うと、パーカーも頷いた。

「We defeat the Merchants of Death. Once again, war is a huge market. Sell as many guns as you can to your customers. Is that okay? (ワシらは死の商人をやっとる。改めて戦争は一つの巨大なマーケットだ。客には銃を売れるだけ売る。良いかね?)」

「了解したよ」

「任しといて」

「OK」

女三人はいずれも悪い笑みを浮かべた。

「You're in a good position. Women (いい面構えになったのう。レディース)」

パーカーは笑ってみせ、鉄も

「全くです」

と感心して見せた。

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