かばんちゃんと楽しいことをする会

さにた

第1話

「かばんちゃんがパークに来てから、本当にいろんなことがあったなぁ」


サーバルは木の上からさばんなちほーを見回して呟いた。カバが言ったように、このジャパリパークでは、自分の力で生きることが掟。しかしそれでは解決できない問題もたくさんあった。かばんがパークに来てから、サーバルはかばんの助けによって、たくさんのフレンズが笑顔になったのを一番近くで見ていた。まるで、笑顔にする魔法のようだと思っていた。


「かばんちゃんはすっごいんだよ!」


それが口癖になってしまうくらい、かばんのことを慕っていたし、大好きだと思っている。何もできないって言っていた頃とは随分と変わって、今はどんなことでも出来るんじゃないかとさえ、思える。


「かばんちゃんは、このパークで暮らしていて、楽しいのかな?フレンズ助けばっかりで、かばんちゃんは助けてもらえてないんじゃ……」


「え?サーバルちゃん?何か言った?」


なんでもない、と、笑ってみせた。こうしていつも隣にいてくれる、かけがえのない存在。そんなかばんが喜ぶようなことをしたい。


「よっ、と……」


サーバルは木から降りて大きく伸びをした。それから、かばんの方を見て、にっこり笑った。


「かばんちゃん!かばんちゃんに内緒でやりたいことがあるから、ちょっと待ってて!」


「え、サーバルちゃん……?」


サーバルは駆け出した。昼間の太陽がさばんなちほーを生き生きと照らす。足に絡まる草が揺れて、自分が通った道をそよそよとなぞる。髪を揺らして通り抜ける風が心地いい。


「サーバルちゃんったら、僕に内緒って僕に言っちゃったら意味ないじゃない」


かばんはくすりと笑い、知らないフリをしてサーバルのサプライズを楽しみにすることにした。はじめてこのサバンナで会ってから、一番近くでその笑顔を見てきた。サーバルの前向きさは誰にも劣らない。きっとまた、楽しいことを教えてくれるんだろうと思うと、頬が緩んだ。

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