或るお嬢様の咄

「今日からお前は神木一家の一員としての自覚を持ってもらう。」

私がこの家の全てを理解するきっかけとなった言葉だ。

食事マナー、言葉遣い、服装礼儀作法その他色々……

うんざりするほど覚えさせられた。

そして今日、この秋晴れの日差しが眩しい日に

私は結婚する。

もちろん相手は父が決めた人だ。

私の決定権などあってないようなものだ。

しかしそれにも慣れてしまった。

中学三年の時からそうだったのだ。

それまでは甘やかされて育てられて来た。

それが今や名家のお嬢様として役目を果たさないといけない存在だ。

兄も母も何も言ってくれない。

どう考えても私はこの結婚に反対なのだ。

それぐらいわかってるはずだ。

一度だけ昔甘やかしてくれていた使用人のおばあちゃんに相談してみた。

彼女はとても優しかった。

でも同乗してくれるだけで

「お父様の判断ですから……私めには、何もできません。」

結局はこうだ。


何を恨めばいいのだ?

自分か?

父か?

反対してくれない母や使用人か?

着たくもないドレスを着さされ、結婚したくもない人と挙式を挙げなければいけないなんて私の知っているお嬢様の姿ではない。

「人は生まれる場所を選べない。

でも生まれた場所でどう生きるかは決めれる。」

私の好きな言葉だった。

選べないではないか。

まったくもって理不尽だ。

ああ…もうすぐ始まる……。

もし……

もし「王子様」が存在するなら……

助けて…お願い………

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