十一話 はじめてのクエスト 其の一


それは一日の始まり


生命が活動を始める時



清々しい朝だ。馬小屋の窓から日の光が差し込み、俺を優しく起こしてくる。

とても気持ちよく起床することが出来た。


いや、比喩表現とかではなく本当に太陽の精霊でもいるんじゃないかと言うぐらいに目覚め方がすっきりしている。


さすがにいないよね? 太陽の精霊みたいなやつとか。


念のために周りを確認してみる。


馬、壁、干し草、服が乱れたアリス、壁、馬、馬。


「よし、特に変わったところはないな」


では、脳も覚醒したことですしそろそろ活動し始めますかね。


…………ん? 待てよ。さっき周りを確認したときに違和感があったような…… 


もう一度確認してみる。


馬、壁、干し草、服が乱れたアリス、壁、馬、馬。


馬、壁、干し草、服が乱れたアリス……服が乱れたアリス?!


そう、違和感はこれだ。俺の隣に服が乱れたアリスがいる。


昨日の夜は肌着のアリスに悶々していたが、今日は朝から服が乱れたアリスを拝むことになるとは……


しかし、このアリスも普段とは違った艶やかな雰囲気があって良い。


「……ん、………んう」


おっと、アリスもそろそろ起きそうだ。


ゴロン、ズルッ


「?!」


俺は今非常に驚いている。


どうしてかって?


何故なら、ついさっきアリスが寝返りを打ったときに服がより乱れて、いろいろと見えそうになっているからだ。


さっきの状態でもかなりえっちぃ格好だったのに、今の格好は地上波のアニメだと修正ものである。


このままではいけない。これ以上見ていたら変な気が起きてしまう。



そう思って俺はトイレも兼ねて外に出ることにした。



外に出ると、クレアシオンの街が朝日に照らされてとても綺麗だった。

人々も数人歩いているくらいで、街はまだ本格的には活動していなかった。


トイレを済ませて馬小屋へ戻ると、アリスが既に起きていた。


「おはよう、アリス」


「あら、おはよう」


「ふぁ~あ」とあくびをしながらアリスは言ってきた。


「今日は何をする予定なんだ?」


何をしようとも俺はついて行くだけなのだか一応聞いてみる。


「昨日からやろうと思っていたクエストを受けるわよ」


おお、ついにクエストだ。

これをどれだけ待ち望んだことだろうか。


異世界転移と言えば冒険だ。そして、その道中で敵を倒して強くなったり、新たな仲間と出会ったりする。これほどまでにワクワクするものはない。


さすがに気分が高揚する。


「よし、アリス早くクエストに行こうぜ」


「まだ朝ご飯食べてないでしょ?」


「あ、忘れてた」


「急ぎすぎよ、まったく」


確かにエネルギーを摂らないと身体が動かないからな。



というわけで俺達はクエストの前に朝食を食べることにした。


俺達の寝た馬小屋の隣の宿屋は朝は食事処として開いており、宿の利用客じゃなくても朝食を食べられるそうだ。


俺達二人もここで朝食を食べることにした。



基本的にこの時間は一つのメニューだけしかない。

そうすることによって客の回転効率を上げているそうだ。


俺達がきたときは比較的空いていたため、すぐに朝食にありつけることが出来た。


朝食のメニューは、パン、よく分からない野菜のサラダ、黄色いスープ、目玉焼きのようなもの、得たいの知れない肉、といったもので、内容も充実していてとても美味しかった。


腹ごしらえが済んだら荷物をまとめて馬小屋を出る準備をした。


本来は人間の泊まるところではないが、感謝の意は述べておく。


ありがとう、また使わせて貰うときが来るかもしれないから、そのときはよろしく。

出来れば使いたくないけど、特に冬場とか。


まあいい、そんなことをしているうちにアリスも準備が出来たみたいだし冒険者ギルドに行きますか。


俺達は冒険者ギルドへ向かうため、馬小屋を後にした。日は先ほどよりは少し高くなっていて、道を行き交う人の数も増えてきていた。


冒険者ギルドにも既に今日の仕事を探そうとする冒険者達がかなりいた。


俺とアリスは冒険者ギルドに入ると、クエスト募集ボードに向かった。


クエストというものは人々からの依頼のことである。主にモンスター関連で助けて欲しいことを冒険者達に依頼している。


俺達は早速今日のクエストを探すことにした。クエストは早い者勝ちなので、なるべく良いものを見つけなければいけない。

しかし、俺にはどのクエストが良いかなんて正直分からない。


ここはアリスに任せるか。


そう思って横を見ると、アリスはクエストボードとにらめっこしていた。


「…………」


ただひたすら無言で探しているところを見ると、良いクエストがないのかもしれない。


しかし、俺には特にしてあげられることがないので、黙って待つことにした。


待つこと五分、アリスがクエストを決めたようだ。


「これにするわ」


そう言ってこちらに見せてきたのは、


「デビルズラビットの駆除依頼」


と書かれたクエストだった。


街の近くの森林がデビルズラビットに食い荒らされていたらしい。

今回はそれの駆除依頼だそうだ。


「デビルズラビットならそこまで強くないと思うから、カイトでも大丈夫なはずよ」


こっちの心配までしてくれちゃってまあ。


でも、アリスが言うんなら異論はない。


「分かった。じゃあそのクエストにしようか」


「ええ」


そう言って俺達は受付に行き、クエストを申請した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る