平成三十年

平成三十年一月一日


 睡眠すいみんをもってしてもかわきがとれないまま、めてしまった。なんでもないあさだった。/へいせいさんじゅうねんいちがつ一日ついたち、またこんなからはじめなくちゃいけなくなってしまった。/おもえばぼくは、文章ぶんしょうきかたをだれかからおそわったような記憶きおくがあったにもかかわらず、すっぽりけてしまっていることにがつく。おそらく教師きょうしからだったのだろうけれど、いまとなっては連絡手段れんらくしゅだんさえも見当みあたらない。実質じっしつ存在そんざいしないのとおなじだろう。それでかまわないとおもった。教師きょうしなんてのは、いまとなっては化物ばけものかわをかぶったなにかのようにしかえていない(ひどい……)。はてさて、いつからそのような感情かんじょうわせたのだろうか。おもそうにも、おもしきれそうにない。/あたらしいとしからこのようなつまらないことをかんがえて、たいして意味いみのないことに時間じかんついやしていることにくのもなんだかしゃくなので、つぎはなしうつろう。では、現在げんざいのわたしにとっての教師的存在きょうしてきそんざいとは、いったいだれのことをしているのだろうか。単純たんじゅんにいえば、わたしよりも年上としうえの、さまざまな経験けいけんをしてきた諸氏しょしになるのだろうけれど、ほんとうにそれだけで事足ことたりるだろうか。いまのわたしには、やはり判断はんだんがつきかねる。本当ほんとうならば、ここで恩深おんぶかだれかがかんできてもおかしくないはずなのだけれど、皆目かいもくそのようなひとをついにかけなかった。どうやらみな悪魔あくまか、はたまた欲望よくぼう権化ごんげのようだった。それでかまわないが、それならば、あとすこしだけでよかったので、わたしのほうになおして、そのかたちもよくわからないおのれのかおを、ぜひわたしのかいして、よくのぞきこんでみてほしい。おのれがいかによごれた存在そんざいであるかということが、じつによくわかるはずだろうなので。/さて、ここまできあらわしてみると、今度こんどはわたし自身じしんのうすぎたなさに失望感しつぼうかんおぼえて仕方しかたがなくなってしまう。いくら社会しゃかいにごりきっているからといって、簡単かんたん他者たしゃのせいにしていいなどという自分じぶん勝手かってなふるまいは、だれからもけっしてゆるされていない。どうしたものか。たとえぼくなにかをいったとして、やはり世界せかいなにわっておらず、またきまっておなかおをして、ただ意味いみもなく、とある一点いってんひかりをたよりにうごつづけているようにしか、どだいえていない。そのことだけは、よくっていたようにかんじる。だれかにとって唯一ゆいいつすくいだったかもしれない。/続


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 しかし、そのうごいていないかのようにえる一点いってんひかりにも、なんらかのゆらめきがあることにく。これはとんでもない発見はっけんだった。もちろん、そんな事実じじつはすでに科学的かがくてき証明しょうめいとか実証じっしょうとかされているのかもしれないけれど、そのような生易なまやさしい説明せつめいのことではなく、実感じっかんとしてわいてきたということを強調きょうちょうして、こんなに、世界せかいのどなたかにおらせしたくなってきてしまったということだ。こんなこと、ふだんならばたとえいていたとしても、あたりまえのことだと無関心むかんしんそうにながすというくらいしかろくにおぼえてこなかったというのに。きっとそう、あのころをおもしそうになったからなんだろう。/学生時分がくせいじぶん不思議ふしぎ連続れんぞくだったようにおもす。ふゆのまどろみは、きっとその一点いってんひかりのゆらめきによるものだったのだと、おもかえしてかされる。そのひかりいろ成分せいぶんは、きっとしろあかくろあたりだったと記憶きおくしている。そのいろたちのいろ世界せかいがまずはっきりとらしだしていたのは、みどりちゃだった。さながらいろのようだった。おおむねそのような解釈かいしゃくをしてよいだろう。こころある教師きょうしならば、きっとおおきなはなマルをつけるに相違そういない。いまにしておもえば、かけがえない時間じかん空間くうかんであった。二度にどもどるときはないかもしれないが、時折ときおりおもしては、どこかのだれかとおなじように、やはり感慨かんがいにふけるのだろうか。/ここまでの文章ぶんしょうに、なにあやまりがあればその都度つどおしえてほしい。最近さいきんのわたしには教師的存在きょうしてきそんざいいちじるしくりないからだ。/終

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