今は亡き想い 捌


雨もすっかり止んで

夕焼け空が広がる雲1つなく雨が降っていたのが嘘のようだ

殿は洞窟を抜けて山を降りもう街の近くまで歩いていた

殿「やっぱり結構距離が…。」

怪我というよりは疲労で脚が縺れそうだ

山の中で怪我をした場所はキルト。が応急処置を施してくれたおかげですっかり痛みもひいている

殿「手慣れているわ本当に。それにしても羽織物いつ渡せばいいのか。」

次はいつ会えるかも分からない

多分また山に行っても絶対会えるとも限らない

ましてやこの街に来るなんてもっと…

ザキさん「お、殿じゃんってどうしたその怪我と汚れ!」

蒼「うわ!なんでそんなにボロボロなの?!」

そこにはザキさんと蒼がいた

夕焼け空が段々と黒い夜になってるのに気づかなかった

ザキさん「とりあえず街に行こう、ほら。」

ザキさんはしゃがみ殿へ背中を見せる

殿「い、いいですよ!そんな歩けますから…。」

ザキさん「怪我してる女の子歩かせる男が何処にいるんだよ早く早く。」

蒼「殿さんザキさんが良いとこ見せたいってさ~。」

ザキさん「誰もんな事言ってないわ!」

いつもと変わらない2人のやり取りをみて街へ帰ってきたなと実感する

殿「でも私、着てる物も汚れてますしザキさんの洋服に泥とか。」

ザキさん「はいはいどうせまた狩りに行って泥んこになって帰ってくるからそういうのは気にしなーい。」

蒼「ザキさんじゃなくて泥んこになるのはいつも僕だけどね。」

ザキさん「…うぃっす。」

殿「ふふふ、じゃザキさんの男気に甘えて失礼致しますね?」

ザキさん「はいよー、んよいしょ。」

ザキさんは殿をひょいとおぶる

鍛えてないめんどくさいといいつつちゃんと男の子である

蒼「ひゅーザキさん今輝いてるよ!」

ザキさん「いつもだわ、いつもお天道様の様に輝いてるわ。」

蒼「眩しい失せろってお天道様に言ってるくせにいつも。」

ザキさん「仕方ないでしょ?!眩しいものは…あ、蒼ポッケからタバコ取って吸いたい今。」

蒼「そのまま目に入れてあげようか?ねぇ街すぐそこなんだから少しは我慢して。」


殿はザキさんの背中にしがみつきながら

ほんのり香るタバコの匂いを懐かしく感じながら

3人で街へと向かった


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