今は亡き想い 伍


キルト。「で、なんでこんな山にいるの。」

パチパチと音を鳴らす火に手を当てながら殿へ問う

殿「…私…」言葉が詰まる中々出てこない

殿「あの、私…多分夢なのか昔の記憶なのか分からないけども何か大切なものを思い出せなくてそれが何なのかずっと、モヤモヤしてて…それで。」

キルト。「それは見つかったわけ?」

横目で殿を見つめるなんて冷たい目をしているのだろうか

殿「確信はないのだけれど、きっと貴方の事だと思うのキルト。さん。」

キルト。を見つめて殿が出した答えを伝える

それを聞いたキルト。がクスクスと笑い始めた

キルト。「ははっあんたの“大切なもの”が俺?冗談良してくれよじゃあ聞くけど…。」殿の前に歩み寄り

キルト。は殿の顎をクイッと持ち上げ顔を見つめたそして

キルト。「あんたの大切なものって忘れる事なの?」

とても痛い何が壊れそうなくらい痛い言葉が殿に刺さる

殿「それは…。」言い返せないなんでどうして違うと言えないのか

キルト。「ただの気のせいだろ雨がやんだら家に帰れ、俺はもう出る。」

そう言って立ち上がり洞窟の入り口へと歩いて行く

キルト。「じゃあな。」スッと洞窟の入り口から出ていく

殿「キルト。!!」雨音だけが洞窟へ反響している彼女の姿はもうない

殿「…あ、これどうしよう。」

被せられた羽織を握りながら周りをみるどうやら洗濯出来るものはなく本当に必要最低限のものしか揃っていない

殿「(あの人の匂いやっぱりどこか知ってる懐かしい匂いがする。)」

羽織から香る微かな淡い記憶

私はきっとあの人に謝らなければいけない

私はきっとあの人の事が忘れなれないくらいに…

殿「私、本当に最低だ。」羽織を顔に当て歯を食いしばり殿は涙を流す


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雨の中の妖山をかける

キルト。「雨が強くてよく前が見えない…。」

『キルト。!!』

殿が最後に自分の名を大きく呼んだ声を思い出す

キルト。「……昔のはもっと沢山呼んでくれてたのにな。」

妖山の奥へ奥へと進む

もう後ろは振り向かない振り向けない


後戻りなど赦されない


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