ドラマ 『荒神』 鑑賞日記

今月17日に放送していた、『荒神』 (宮部みゆき原作)のドラマを見ました。

原作は複雑でわかりにくいし、どんでん返しの繰り返しなので、そのままではテレビ的に鑑賞に堪えないと思っていたら、ずいぶん改変していました。

原作者、怒らないのかなぁ。

たしかに朱音さんも宗栄さんもよかったし、簑吉がかわいらしかったけどさ。


ネタバレあらすじは、こちら。

http://moviebased.com/koujin-75


なるほど怪獣映画という義母の印象どおり、怪物に迫力ありました。

原作には 「目がない」 ことになっているのですが、ドラマでは百ぐらい目があちこちにくっついている。

矢が突き刺さると、新しいのが生えてくると言う具合で、不死身なんですねえ。

これに対抗するために、村人たちが火や竹やりを使うんですが、まったく太刀打ちできません。

無敵の怪物VS武器を持たない村人、という構図が泣けます。


このドラマは、菊地圓秀が、怪物の描かれた絵馬を奪ったことになってます。

そのために、怪物が出現した、なんてセリフがありますが、原作では菊地圓秀は、絵馬を奪っていません^^;;;

誘惑されたけど、しっかり自制したんですね。

だいたい菊地圓秀役の柳沢慎吾が、わたしのイメージとはまったく違ってるし、宗栄は少々、やさ男すぎる。

源一とじいの区別が付かない(^^;;;

でも朱音さんとおにーさんの曽谷弾正はイメージだったな。


番所が壊れるシーンがありますが、お金かかってるだろうな。怪物も、CGなのにリアルだし、予算が潤沢にあるみたい。

でももちろん、制約はあるわけです。締め切りもあるだろうし、長い話を刈り込んだり新しい解釈をいれたり。

子守唄のシーンが、原作にはないのですが、ドラマ的にはかなり効果的でした。


『荒神』 を読んだひとのなかには、「この怪物はゴジラだ」 という感想を持つひともいるようです。

これだけの怪物を考えついて、しかもちゃんと理由がしっかりしているところが、宮部みゆきのすごいところ。

背景をすっ飛ばして対立ばかりドラマにするのは、まあ、娯楽としてはアリなんでしょうが、ちょっと物足りないかな。

連ドラにすりゃ、よかったのにね。(脚本家がいないか……)


作品としては、オリジナルの 『荒神』 よりも 感動的に仕上がっていました。


冒頭が朱音さんから始まり、その優しさと意志の強さに宗栄が惚れていくこころの機微がとてもよかったです。

 原作を読んでいて、何度か読み直したわたしとしては、

「これはまったく別のモノだな」

 という感想を抱いてしまいます。

 ストーリー的には同じなんだけど、あちこちまったく違う話になっても不自然じゃなかったり、登場人物が整理されちゃって、重要な百足さんたちが登場しなかったり、登場人物の名前が変更されていたり。


 日本の話なんだけど、ダークファンタジーで悲しい話、というテイストなのですね。

 嫌な気分にならないけれど、ドラマのほうが最後がゾッとさせられて、これはアリだなと思いましたねえ。


 怪獣の描写が、原作を踏まえた上でそれを乗り越え、もっとおぞましい形になっているのが、すごいところだと思います。

 簑吉の怪我の描写がえぐかった。

 でも、簑吉がなぜ助かったのかという説明が、やっぱり不自然。


 この、『荒神』の本来の意味は、「あらぶる神」ということで、けっして人形とは違うはずですが、つちみかどさまとか、呪いとか出てきて、神が人間のコントロール可能であるかのようなドラマや原作の語り口には、

「現代日本人の感覚だな」

 と違和感を感じてしまいます。

神なき世界を実感する。

 ま、表現の自由は、だれしもあるわな。

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