ブッククロッシング裏話

008年ごろ、ということは今から10年前ですが、ブッククロッシングという活動に参加しました。

要らなくなった本を、喫茶店とか温泉とかにプレゼントします。

その代わり、そこに置いてある本は、無料でもらえます。

(ただし、『ブッククロッシング中』 と タグされているもののみ)

アーノルド・シュワルツェネッガーが参加しているという話を聞いて、面白そうだと思ったんですね。

自分の好きな本が、無料でもらえるかも、と期待したんです。


数ヶ月後、家族旅行でホテルに泊まることになりました。

そこでは、ブッククロッシングをやっている、ということでした。

なるほど、そこには、モールス・ルブランの 『金三角』 など、ルブラン系の推理小説がずらり。

よく見ると、その本はハードカバー……。

旅のお供にするにはドン引きな本でした。

でも、根性で3冊ばかり、持って帰りました。(ルブランの推理小説は、一度は読んでみたかったのよ)


で、読みました。稚拙な伏線の張り方は、まあ、むかしの小説だから仕方ない面もあるんでしょうが、このシリーズ、子ども向けらしくて、少々、話が単純すぎる傾向がありました。

要らん本だから持って帰ってくれ、というのもわかるね。

さて、この本をどうしよう、と考えました。タグがついているので、売り飛ばすことはできません。処分? まだ読めるのに? もったいないよ!


しかし3冊のハードカバー本を、いつまでも置くスペースは、うちにはないのでした。いったいどうしたものか。ブッククロッシングのためのスペースがある喫茶店や企業は、うちからは遠い。ハードカバー3冊もって、電車で行くのはきつすぎる(^^;;

本をやりとりするのに、こんな障碍があるとは、思ってもみませんでした。

わたしは単純に、郵送でやりとりするのかと思っていたのです。

ところが参加者からもらった本は、どれもこれも ワケあり商品でしたし、「好みじゃない」 と投げ出したくなるものもありました。

そういう本をどうするか。それも一緒に考えなくちゃいけないのです。わたしは、この活動に参加したことを、後悔しはじめるのでした。(せっかく本好きの縁もゲットできたのに、共通の話題が 「好みじゃない」 なんてひどいよね……)


数日後、再び家族で温泉に行くことになりました。そこには、20畳ぐらいの休憩場所がありました。フローリングではなく畳がしいてあって、自由に本も読めます。これだ! 本を置くなら、ここしかない。

ウキウキしながら、その温泉に本を抱きしめて行きました。そこで担当の人に、「本をプレゼントしたいので」 といって、例のルブランを押しつけてきました。ほかの本は、荷物になるので持って行けなかったので、今度にしようと画策していましたが、家族は、「あの温泉は遠すぎる」と言い出し、計画は頓挫。

ほかの本は、通院していた総合病院に押しつけてきました。(病院が、寄付本を募集していたのです)。


 あれから10年。

最初のうちこそ、作家を招いてその話を聞く、というイベントもありました。有名な角野光代さんとかも、広島に来られたことがあります。スケジュール的に合わなかったので、結局角野光代のナマ出演は見られませんでしたが、最近リーダーはどうしているのでしょうね……。

お金がなくて、続かなかったのでしょうか。


 どんなに志があっても、けっきょく、リーダーに資質がないとダメだなと実感しました。いい縁をもらったのは感謝ですが、今後はブッククロッシングはあまり推さないでおこうとこころに決めていたりします。


 本が好きだから何でも読む、という人ばかりが集まっているわけではないこの活動。

 読者というものの残酷さと気まぐれ、ご都合主義を、わたしも持っている。

 ブッククロッシングは、自分の中の悪を知るきっかけになった、いい経験でした。

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