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「もうぉ何よぉ、そんなにあたしに会いたかったのぉ?」
「てめぇじゃねぇ、こいつにだよ」
そう、コタツにだよ!
「天国」
「そう、それは良かったわ」
コタツに足を突っ込んでぬくぬくしていると、ミケが湯呑を持ってやって来た。なんて気の利くやつなんだ。
「今更言う?」
「あ、サツマイモ、ありがとな。ミケんとこの甘くて美味しいんだよな」
「そう? 親が聞いたら喜ぶわ」
「実は毎年楽しみにしてる」
「ふふ、まぁ長年作ってるからね」
「ご両親によろしく言っといて」
ミケのご両親には今まで何度か会っているが、もう親父さんなんかミケにそっくりで。ガッチリ体型で“ザ・農家の親父さん”って感じの、日焼け顔の強面の人だ。お袋さんも“かぁちゃん”って感じの、サバサバしていて気さくな人だ。
もちろん初めて会った時は、和やかな空気じゃなかったけど。ミケがこっちに来てゲイバーで働いているのを見てかなり怒っていて、まぁミケもそこで働くことは言わずに田舎を出て来たもんだから『親に嘘ついてまでお前はここで働きたいのかぁ!』って裏路地で正座させられたりして。ご両親としては嘘をついて出て行ったのが許せなかったとか。今はもうすっかり親子仲良しで帰省の時だけじゃなく、野菜の仕送りとか頻繁にあって。俺はそのおこぼれに預かることも多い。助かる。
「親父さん元気にしてた?」
湯呑の中身が当然のように芋焼酎だったけど美味いから何も言わない。ただ飲み過ぎには注意しないと。明日は仕事初めだから。
「元気よ元気。うるさいくらい元気よ。おじいちゃんも元気で困るくらい」
「いいじゃん、元気そうで」
「仕事を続けられているからいいけど、嫌よ。結婚はまだかってうるさいし。妹が結婚して孫が生まれたでしょ? 男でも女でも構わないからお前も安定しろ、とかうるさくて」
「どの親も言うことは同じだな」
「ねー。安心はさせてあげたいけど、今が楽しいし。その内良い人ができたらね。それまでは、はなちゃんの相手をしていてあげるわ」
「は、こっちのセリフだから」
ゴン、と湯呑がぶつかる。あぁ全く、コタツもあって酒も美味いなんて。ここから出るのは至難の業だなぁ。
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