冬の贈り物

カゲトモ

1ページ

「ん?」

 眉根をグッと寄せて見つめたのは、ドアノブに引っかかる白いナイロン袋。スーパーとかで買い物した時に貰う(いや、今は買わなきゃいけない)やつだ。

 もちろん帰省する時に自分で掛けたものじゃないし、誰かが掛けて行ったのだろうけど。

 家を知っている友達もあんまりいないし、多分・・・

「やっぱりミケか」

 袋の中には、ゴロゴロと小振りではあるが立派な土付きのサツマイモが入っている。多分、一足先に帰省から帰って来たミケが置いて行ったのだろう。

「ありがたいねぇ」

 サツマイモなんて独り身の男がなかなか購入するもんじゃない。でもたまに凄く食べたくなるんだよなぁ。しかもミケの家のサツマイモは凄く美味い。

「さっむ」

 旅行バックを放ってすぐさまエアコンをつける。久々の自宅は小ざっぱりとしていて、なんとなく寂しげに見える。

 まぁ男の一人暮らしなんてそんなもんだ。

 照明とテレビをつけて、バックを開ける前にスマホのロックを開く。

「サツマイモ、ありがとうな、と」

 さっぱりとした礼を送信して、洗濯物を放りこむ。

 本当は石油ストーブの上で焼き芋とかして食べたいんだけど、あいにくこの家にはエアコンしかないもんで。

「あー、コタツ欲しい」

 コタツ。あいつは冬の悪魔であり天使である。インテリアと合わないからと購入を見送っていたけど、そろそろ真剣に考えてもいいかも・・・なんて。

「ふぅ」

 やっと部屋が暖まり、一息ついた時にピロン、とテーブルの上でスマホが鳴った。ミケからだ。

『どうたしまして♪』と可愛らしい、犬のスタンプで返事が来た。その後に続いて『今から行ってもいい?』のコメント。いや、来てもいいけど・・・!

 返信で使ったのは『首を洗って待っていろ』のスタンプだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る