第4話
「昨日未明、ニューメキシコ州の砂漠に未確認飛行物体、と言うよりすでに正体確認済みと言ったほうがいい宇宙船が墜落した。この宇宙人は宇宙船が地面に激突する前に脱出用ポッドで逃げたが、着陸に失敗したようだな。命は助かったが、無傷ではすまなかった。かなりの重症だ。宇宙船はそのまま墜落し、消滅してしまった。未知のエネルギーの爆発により、金属片の欠片すら一片も残っていない」
「で、この宇宙人の記憶を抜き取れと言うんですね」
「そうだ。Gが来る前に、一通り調べておいた。人間の脳よりも少しばかり複雑なようだが、大きな差はないようだ。だから人間と同じように記憶が抜き取れるはずだ。上がどうしても宇宙人の記憶、特に科学技術に関する情報が欲しいと言っているものでね。宇宙船のほうは跡形もなく吹っ飛んでしまったし」
「でも記憶を抜いたら、廃人同様になるんですよ。生かしておいて何とかコミュニケーションを取ったほうが、いいのではないですか?」
Rは首を横に振った。
「身体の損傷を見ただろう。もう死にかけているんだ。長くはもたない。脳の構造以上に体の構造が人間と違っていて、その上に傷が深いこともあって、ここに常駐している医者はお手上げだった。外部から医者を呼ぶわけにもいかないし、もう助ける手立てはない。そうだとしたら、記憶だけでも残しておいたほうがいい、と言うのが上の判断だ」
「そうですか」
「早速やってくれ。さっきも言ったように、いつ死ぬかもわからない。時間がない」
「わかりました」
三体をコンピューター室に運び込み、医療チームが処理を終えた。
みんな部屋から出て行き、私一人が残された。
この装置を開発したのは私であり、現在のところ私以外に扱える人間がいないからだ。
作業に加わることが出来ない人間が同じ部屋の中にいても、邪魔にしかならない。
私は宇宙人を見た。
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