第17話 鬼瓦
「店長、なんで鬼瓦なんて置いてあるんですか?」
「いやあ、蚤の市で手に入れたんだよ。なかなか味のある瓦だろう?」
小洒落たカフェの店長がアルバイトの女子と話していた。うーん、と唸って女子は、
「面白い作りだとは思いますけど……このカフェに合うでしょうか?」
「あー、それは……」
と、店長は頭を掻く。確かにこのカフェのインテリアとしては場違い過ぎる。サンクトペテルブルクで安来節を踊るような、そんな違和感を抱かせる。
「片付けとこうかな、これ」
「そのほうがいいですよ、店長」
そういうわけで鬼瓦は奥へ引っ込まされることと相成ろうとした、その時である!
「そ、それは!」
一人の老紳士が戸口に立っていた。彼の視線は鬼瓦に吸い込まれている。
「いらっしゃいませ」
アルバイトが挨拶した。店長もにこやかに、
「どうかなさいましたか」
と言った。老紳士は鬼瓦を指さして、
「そ、そ、それは……!」
と震えながら言うばかりである。カフェの働き手たちは怪訝な顔をして彼を見つめる。
「一体、どうしたんです?」
「それはね、こいつは私を使って嫁を撲殺したからだよ!」
と鬼瓦が叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます