猫にあるまじき

しろだん

第1話

「うわっーーーーーーーーーーーーーーー」

「遅刻だよーーーーーー」

目覚まし時計の針が8時16分を指していた


「なんで起こしてくれなかったの!お母さん‼」

つま先がパンダの顔になっている履き物をパタンパタンといわせながら階段を下り、リビングのドアを

思い切り開くとそこにはスーツに着替えた母がいる。

「7時にちゃんと声をかけたわよ」

新聞を見つめたまま素っ気ない返事が返ってくる。

食事を終えコーヒーを片手に新聞に目を通す母。

発売されている全ての新聞に目を通す。

それが母の1日の始まり。

うーん。とても優雅でいらっしゃる。

じゃ、なくて

「今日入学式なんだよ!」

あっ、固まった

「……あっ、そう、そう…今日だったわね」

あっ、顔だけがゆっくりこっちに回った

「忘れてないわよ、ええ、知ってもすもす」

「ちゃんと言えてないわよ」

「娘の晴れの舞台を忘れてたわね」

「…ごめんね…お母さん…失格ね…」

肩を落とす母を見て可哀想になった

「大丈夫。お母さん。いつものことで平常運転だし。お母さんは何も変わってないから安心して」

「それ、励ましになってないから…うっー…」


仕事はすごく出来る人

「ごめんね、入学式に仕事でいけないかも」

いつも優しい人

「今日は仕事を早めに終わらせてお祝いするね」

少し残念な人

「あっー、コーヒーこぼしちゃったー

ティッシュは…あっー花瓶がー」


もう少し娘の私も見てほしい…と思ったり…

でも…感謝しています お母さん。


母は国の研究機関で、今まで人には隠されてきた魔女について研究している。

初めてその話を聞いたのは私が小学2年生の時。

当時魔女については一部の人しか知らない国の最重要機密事項だった。勿論母も機密を知る一握りの人だった。

『決して他言してはいけない秘密』

ストレスとプレッシャーを解放したかったのだろう

家の中では雄弁で快活になった。

アニメの魔女に憧れていた私は実在の魔女の話を夢中になって聞いた。

私が余りにもニコニコしながら聞くのでほとんど全てを私に聞かせたそうだ。

世界を滅ぼす魔法まで…

それはどうかと思いますよ、お母さん。

それから5年。魔女の存在を世界中の人々が知り共に暮らす今、国が魔女の理解を深めるために創った唯一無二の大学附属中学校の入学式に遅刻しようとしている私。

遅刻は

いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!



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