第3話 僕の家族構成
公園のベンチで座っていると誰かが声をかけてきた。
「何をしている柊介」
「!?姉さん。ちょっとね」
「まぁだいたいわかるがな。さっさと帰るぞ」
そう言って来たのは柊介の姉で大学生の浅倉泉(あさくらいずみ)だ。
茶髪のショートヘアで、大人のスタイルをしている
大学生二年の泉は真面目で言いたいことははっきりいう
性格だ。
だからよく、小さい頃は泉に毎日ゲームより勉強しろと
言われてきたので、柊介は勉強もなんとかできていた。
二人は家に帰り、柊介は部屋に戻る。泉はリビングに
向かい、晩御飯の準備をする。柊介の家族は姉一人と
母親一人だ。
父親は小さい時に離婚していて、母一人で二人を
育てていた。
その母は保育園の先生をしている。その優しい性格もあり
柊介は甘えて今部屋にある物をたくさん買ってもらっていた。
「柊介!お前を手伝いな」
「いやだ」
「なら飯は抜きだぞ」
「いいよ。あとで買ってくるから」
「そうか。買いに行ったらそのまま外にいるんだな!
家にはあがらせないぞ」
「わかったよ。手伝うよ」
柊介はしぶしぶ手伝う事になった。家では泉が
家事をやっている。しっかり者でもあるので
手を抜くのは嫌いみたいだ。
料理ができる頃、母親が帰って来た。
「ただいま」
「お帰り母さん。ごはんできてるよ」
「ありがとう泉。助かるわ」
「母さんは働いてるんだから、家の事はうちらに
任せな。こいつも手伝ったから」
「そう。ありがとうね柊」
「別に」
「どうかした?いつも以上に暗いけど」
「あ、母さんもわかる?じゃぁ母さんも来たし
何があったか話しな柊介」
「別になにもないよ。さきに食べる」
柊介は何もはなさなかった。母親の優香(ゆうか)に
聞かれても返事をしなかった。
部屋に戻り、キーボードに向かう。ヘッドホンをつけ
演奏しようとするが、音楽室での事が頭にうかび
演奏できないでいた。
「本当にダメだな僕。好きな事も人前じゃできない!
これじゃ将来、何もできないままだよな」
自分の事でネガティブになる。これまで一度も
ポジティブになった事はないが。
しかたなかく寝る事にした。朝、泉より早く
起き、準備をしてでようとした時、母親の優香が
やってきた。
「いつも早いわね」
「!?母さんも。いつもはまだ寝てる時間じゃ?」
「今日は早番だからね。ねぇ朝ごはんは食べたの?」
「いい、コンビニで買うから」
「よかったら作るけど」
「いいよ、仕事があるんでしょ。ゆっくり休んで
なよ。飯は姉さんが作るし」
「ありがとね気をつかってくれて」
「!?つかってなんかないよ」
優香は後ろから柊介を抱いた。優香はまだ若く
しかも、姉の泉よりもスタイルがよく豊満な
胸が背中に当たり、柊介は意識をしてしまう。
「電車来るからもう行く」
「そう、いってらっしゃい」
慌てて家を出た。いつもは時間に余裕がありこの日も
まだ余裕はあるのだが、柊介は初めて駅まで
走って行った。
息を切らしながら電車に乗る。なんとか息を整え
学園のある駅についた。
教室に入り、鞄をおいて、どこかに向かった。
そこは音楽室だった。入ろうとするが、中々前に
進めない。
すると後ろから声をかけられた。
「やぁおはよう浅倉くん」
「!?部長さん。あの、えっと」
「大丈夫だ。何も言わないよ。だから中に入らないか」
「・・・・・・」
しかたなく一緒に中に入る。香澄はピアノの前に
座った。
「よかったら私の演奏を聞いてくれるか?」
「部長さんのですか?」
「ああ、まぁあまりうまくはないがな」
「わかりました」
「ありがとう」
香澄はピアノを弾き始めた。演奏しているのは
有名な曲、翼だった。
演奏を終え、感想を柊介に聞く。
「どうだった?」
「そうですね、よかったです。僕もこの曲好きで
よく弾いてますから」
「そうなのか。なら、聞かせてくれないか?今は
私一人だ。緊張する事もないだろう」
「・・・・・・わかりました」
柊介は香澄と変わり、座った。そして同じ曲を
演奏したが、緊張していたせいか、自分の部屋で
弾いているヴァージョンを弾いてしまった。
それは元々バラードのこの曲をロック風に
アレンジしたものだった。なのでピアノだが
激しい音が響いていた。
「ははっ!すごいなキミ。この曲をそんな風に
弾くなんて」
「!?す、すいません。いつも部屋でやってる
感じでやってました」
「いやいいよ。聞いてて面白かったしな。やはり
キミはいい演奏者になれるな」
「ありがとうございます。でも、僕は人前に出る
のが苦手なので無理だと思います。それにまだ
演奏者になるかどうかも決めてませんし」
「そうなのか。他に何かやりたい事はあるのか?
一応先輩だから話は聞くぞ」
「ありがとうございます。でも、僕はオタクで
漫画とかゲームが好きなんです。だからそういう
事に関われればなっては思ってますけど」
「だったらその道に行ったほうがいい。好きな事を
仕事にできるのは難しいだろうが、諦めずに
それに向かえばきっと叶うさ」
「はい。まだ何をするかはわかりませんが、一応
目指してみます」
「ああ、私でよかったらいつでも相談に乗るからな!
お前は可愛い後輩だし」
「か、可愛いですか?僕みたいなカッコ悪い奴が」
「自分の容姿は否定しないほうがいいぞ。せっかく
親からもらった物だからな。それに人は容姿じゃない
大事なのは性格だ。キミは優しい。それで充分
可愛いさ」
「僕が優しい。ただの臆病者だと思いますけど」
「ふふっそれもあるけどな」
「そこは否定しないんですね」
柊介は少し楽しそうに香澄と話していた。自分に
そんな事を言ってくれたのは初めてだったので
柊介はこの人は信じられると思った。
放課後、勇気を出して香澄の所に行き、吹奏楽部で
大勢の人がいる前で演奏をした。その演奏に
最初は笑っていた部員達も拍手をし、柊介を歓迎
する形になった。
でも、柊介は正式にはまだ部活には入らなかった。
朝とは違い、帰りは少しポジティブな感じで
下校をした柊介。
家でも、泉にはいつも通りの態度だが、母親の
優香には優しくし、家事を手伝った。
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