第58話 可愛くて強くて賢い
「とにかく今日はもう帰ろう。また敵の居る中で体調を崩したら大変だよ」
ぷるぷる
「時間もいつもより遅いんだ。ギルドに行くのも晩ご飯の後にしないと。このままだとノーラが心配しちゃうよ」
ぷるぷる
ぴょいん
「うん、帰ろう。どうせ帰り道にまた蜘蛛に遭遇すると思うしね」
ほらきた
蝙蝠、蜘蛛、蝙蝠、蝙蝠、蛇、蜘蛛、蛇、蝙蝠、蜘蛛、蛇、蝙蝠、蜘蛛、蝙蝠、蜘蛛、蛇
コロちゃん、俺頑張るからフードの中に
ぱたぱた
「ちょ、コロちゃん!もー!」
コロちゃんが若干先行して俺は離れすぎないように合わせる
俺は途中の蝙蝠を手が届く範囲で斬り捨て、蛇を最優先に
コロちゃんは蜘蛛をふっ飛ばしながら連撃を狙いつつ、どんどん奥へ
俺は蜘蛛の3倍近く、コロちゃんは蜘蛛の5割増し以上のSPDを発揮する
ここまでステータスが上がると、蜘蛛もこんなにも楽になるなんて
もしかして俺、実は全然、苦手を克服できてない?
速さに頼って避けるのが上手くなってるだけな気がする…
「コロちゃん大丈夫みたいだね」
うん、やっぱりコロちゃんとSPDのお陰だ
俺、成長してない
5Fも結構深いところまで来ていたようで、4Fに抜けるまでに後2つの集団と遭遇した
明日あたりは6Fに挑む事になると思うけど、そろそろ親蜘蛛が出てきそうだな
いやだなー
コロちゃんに訊いたら絶対に食べに行くとか言いそうだけど
4Fと3Fのヤモリは、コロちゃんに叩き落としてもらうまでもなくなった
見つけてすぐのコロちゃんアタックでヤモリは狩られていく
俺の仕事は魔力結晶を拾うくらい
4Fはまだ蛇に対して出番があったけど、蝙蝠も含めてコロちゃんが無双してほとんど出番がない
3Fは完全に魔力結晶を拾って歩くだけになった
2Fから先も、もうね…
ゴブリンどもにあんなに苦労したのが嘘みたいだ
捕食待ち以外は駆け足で帰って、教会に着いたのが6時頃
帰ってきた俺の姿を見て、久々にノーラが卒倒しかけた
久々とは言うが、計算上は4日に一度のペースなんだよな…
次からは清浄を忘れないようにしなきゃ
「あの、それで、コロちゃんに回復魔法をかけ続けて…いつの間にか気絶しちゃってて」
「それでコロちゃんに助けてもらうまでタコ殴りだったんですか〜?」
ぷるぷる
「もう怒るだけ無駄ですね〜、コロちゃんこそ大丈夫なんですか〜?」
うにょん、うにょん
「コロちゃんすごいです〜!」
よかった
擬態とは違ってこっちはウケてるようだ
「その時、コロちゃんがエルダースライムっていうのに成長して、それで覚えたっぽい【変形】ってスキルだね」
コロちゃんが自慢気にステータスをオープンして見せる
今まで、自分のステータスを自分で数値として見る事はできなかったんだよな…
もっと早く気付いてあげればよかった
「コロちゃんがんばりましたね〜」
なでなで
ぷるぷる
「これからも無事に帰ってきてくださいね〜?」
ぷるぷる
うにょんうにょん
「なるほど〜コロちゃんは成長したのに、ハジメさんはず〜っと蜘蛛が苦手なんですか〜」
「コ、コロちゃん〜!」
晩ご飯おいしかったです…
「ゴブリンが9で2,250G、ゴブリンリーダーが2で1,700G、ココチカバットが131で111,350G、穴蔵ヤモリが27で29,700G、マリボアが40で62,000G、ディアパラタが32で38,400G、合計で245,400Gですか」
頑張ったね〜コロちゃん
なでなで
ぷるぷる
「なんか当然の流れって感じで個室へ案内されたんですが、それについては何か」
「どうせ素材はなくて魔力結晶だけなんですよね?量も多くてカウンターでは無理だろうという予測です」
そんないい笑顔で
だってこの量で素材まで持って帰るの無理だもん…
「あーそうですよねー…」
「蜘蛛は克服したようですね」
「まだ嫌いは嫌いなんですけど、とりあえず腰は抜かさなくなりましたし、視界に入っても戦えるようにはなりました」
「冒険者として頼もしい限りです。ところで、また討伐ペースが加速していませんか?」
倒した敵のステータスの一部を取り込んでるからなー
100匹倒したらまるまる一匹分のステータスが加算される計算だし
「強い敵を倒すと、それだけ早く強くなれるようにできてるみたいです。だから強い敵を倒せるようになったら、できるだけ早い段階で倒す相手を変えた方が効率がいいみたいです」
「そんな滅茶苦茶な加護を与えるなんて、やはり女神様は何か目的があったのでは?」
「なんか全力で冒険を楽しめみたいな事は言われましたね」
「楽しめ、ですか。こっちは楽しめてますか?」
「それはもう、出会ったみんなに感謝って感じです」
「それは良かったです。ところで、今日は時間も遅くて身奇麗ですが、一度帰ったんですか?」
「久々にボロボロになってしまって」
「ハジメさんがですか」
「それが…コロちゃんが成長したのはいいんですけど、その時にトラブルがありまして」
「トラブルですか」
「そうだ、せっかくなんでコロちゃんとも会話してみませんか?パーティ組めばできますよ」
「…この部屋でだけなら、大丈夫でしょう。内緒にしてくださいね?」
本来はだめなのかな?
でもパーティ組んで外に出るわけでもないし、リリアナお姉さん自身、興味もあるようだ
リリアナおねえさんがパーティにくわわった!
コロちゃんにスキル結晶を与えた事、変化中に苦しみ出した事、回復魔法を使い続けてる間に敵に囲まれ、気絶した後にコロちゃんに助けられた事を、コロちゃんを交えて覚えている限りで話した
「コロちゃん、本当に頑張りましたね」
なでなで
ぷるぷる
「昔はスライムも、とてつもなく強大な存在だったという説があります。ただ神話やお伽話のようなものですし、具体的な話はわかりません。魔力も強く、体も丈夫で、今のスライムとは別の存在だったのではという話もあります。もしかしたらコロちゃんはそういった存在に近付いたのかもしれませんね」
「なるほど…でもコロちゃんが元気ならそれでいいか。コロちゃんは可愛くて強くて賢い!それでいい!」
コロちゃんおいでおいで〜
「あ…」
ぴょいん
ふふふ、コロちゃんは俺の相棒なのですよ
なでなで
ぷるぷる
ここに居る間くらいはいいじゃないですか!コロちゃんこっちに来てください!
ぴょいん
なでなで
ぷるぷる
コ、コロちゃん…
「それで、今日の魔力結晶は買い取りますか?」
「あ、この間は金額だけ聞いて、買い取ってもらうのを忘れてましたね…えっと、幾つかは消費済みで、ゴブリンとゴブリンリーダーは消費用にまわして、マリボアはちょっととっておきたいので…」
「登録したばかりなのに、もう初心者を脱したような魔力結晶の扱いをしますね。とりあえず売る分だけ出してください」
「わかりました」
こんな事もあろうかと!
ちゃーんとそれぞれの袋に分けてあるんだもんねー
「これが売る予定の、蝙蝠とヤモリと蜘蛛の魔力結晶です」
「ずいぶんと準備がいいですね」
「数が多いのは自覚してますから」
今から数えるみたいだからコロちゃんおいで〜
ぴょいん
なでなで
ぷるぷる
コロちゃんと戯れてる間に、それぞれの魔力結晶に合わせたカウンターを用意して数えてる
まるで硬貨を数えるみたいだな
リリアナお姉さんだって準備がいいじゃないですかー
「蝙蝠が168、ヤモリが41、蜘蛛が1で、合計189,100Gですね。出来れば今後、大口の買い取りの前には連絡を入れて欲しいです。ハジメさんの場合はダンジョンに潜る前にですね。現金を準備しなければならないので」
「あ、それなら預けておくのはどうでしょう?たしかできるって」
「いいんですか?」
あ、眼鏡が光った…気がする
「特に問題はないですよね…?」
「ではさっそく口座を作りましょう」
「あの、なんか少し嬉しそうなんですが」
「支払いの…口座を作ってもらうとギルドとして助かります」
「たしかに現金を用意せずに帳簿上の数字を弄るだけで済むなら、ギルドとしても楽になりますよね」
「そういう事です」
「で、先延ばしにした金額と期間だけ、促した人の実績になるか、もしかしたら幾らかお小遣いが出ると」
「なんでわかるんですか。普段のお人好しはどこに行ったんですか」
「ひどい…」
結局、利子もないのに一部を定期で預け、現金で9,100Gだけ受け取って残りは普通に預けた
少なくとも旅立つまではまだ何回かダンジョンで稼ぐつもりだし、大部分を預ける一方だと思うから、それなりにリリアナお姉さんの実績にはなるだろう
しかし利子もないのにこんな制度を利用する人は居るんだろうか…なんで成り立つんだろう?
口座開設の最終段階の前には、手数料に関して念を押しながら確認された
口座のある支部への直接の預け入れはタダだけど、それ以外は手数料がかかるらしい
入れた場所と別の支部でお金を出すのに至っては、そこへの送金処理と引き出しで二重に取られるとか
つまり仕送りも二重に取られてる
まあ俺はいつの間にか小金持ちの部類に入ってるみたいだから、それくらいいいけどさー
ほんと、装備の出費が要らなくなるって冒険者として大きいな
あ…結局【魔法剣!】が成長してない
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