第4話⑧(4話完結)
こうして魔王プロトプラズマと魔王エピキュアの戦いは終わった。
そして……。
「魔王……。そんなことがあったのですわね。」
綿貫金剛の邸宅で豊水忍、連城恋、追長静穂達が話をしている。
事の顛末を金剛に伝えたのだ。
「大変なことになりましたわね……。正直なところ、今でも信じられませんわ。」
「兄さんは魔王の戦いによって大勢人が死ぬだろうといっていたわ。」
「そうですわね……。すでにウチの運転手も実際亡くなっていますし、きっとそうなるのでしょうね……。警察などがすぐに動くことはないでしょうし、私達は私達で身を守らなければなりませんわ。」
暗い空気が漂っていたが、豊水が努めて明るく口を開いた。
「大丈夫だ。俺が戦う。俺は魔王になったらしいからさ。」
豊水は手から緑色の光を照らしてみせた。
「魔王は……君の兄は、俺が殺してしまったようなものだ。だが、彼の力は今、俺の中に溶けている。虫のいい言い方かもしれないが、君の兄の力と一緒に俺がなんとかしてみせる。」
恋は豊水を見た。
「わかってる。なんとなくだけど感じる。兄さんの意思を……。あなたに恨みはないわ。でも……。」
一旦言葉を区切る。
「もし……この戦いを仕組んだものが居るなら……兄さんをあんなにした奴が居るなら……私はそいつを許さない。」
「恋……。」
静穂は恋を見た。
「私はね、本当のことを知りたいよ。……だから、」
「残るつもりでしょ?私もよ。」
「へへ、やっぱりそうだよね。そう来なくっちゃ!」
静穂は笑顔を見せた。
「もちろんワタクシも逃げませんわ。ノブリス・オブリージュね。できることは何か、まだわかりませんが……可能な限り力を尽くす所存ですわ。」
「大丈夫よ。確実に静穂よりは役に立つわ。」
「ぅおい!」
「ごめん、照れ隠しなのよ……4割位は。」
「半分以下じゃん!」
恋達は笑った。
このたくましい少女達を守らなければならない。豊水はこころに誓う。
自分が魔王の中でどのくらいの強さなのかは知らないが、とにかくやるのだ。やらねばならない。
他の魔王は一体どのような奴なのか? 恋の兄があのようになったことを考えれば……予想もできよう。
「よし、それじゃ俺はここらで帰るよ」
豊水が立ち上がった。
「豊水さん、あなたはこれからどうするのですか?」
「いつでも戦えるように練習をするよ。スライムの力もまだ使えないしね。だけどその前に飯でも食いにいくよ。」
そして第2話に続く……。
「アッハハハハハ、『兄さんをあんなにした奴は許さない』か。それじゃ私は許されないのかなぁ?」
町中の公園。魔王スターチャイルドは1人で笑っていた。
金剛に植え付けた精神パラサイトから受信した映像を見ているのだ。金剛は洗脳されていることなど知る由もない。
「まぁ、プロトプラズマにも悪いことしたかな。7人の魔王の魂に私が入り込んだおかげで貧乏クジ引かせちゃったんだし。でも悪いのはあの勇者だよねぇ。光の柱もあいつのせいだしさぁ。」
スターチャイルドはベンチに座って足をぶらぶらと揺らす。
「チセちゃん? だれと話してたの?」
公園に入ってきた小学生の少女がスターチャイルドに声をかけた。
「なんだ、人は避けさせていたのに。一応聞かれたからには消しておこうか……。」
スターチャイルド座ったまま何もわからない少女に手を向けようとした。しかし、動作は途中で止められた。
やめろ! ノゾムちゃんに手をだすな!
スターチャイルドの精神に叫び声が響いた。
「はいはい、わかったわかった。宿主様……。」
スターチャイルドは一瞬顔をうつむかせ、再び顔を上げるとその表情はまったく変わっていた。
「ごめんね。なんでもないよ。」
ノゾムと呼ばれた少女は不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
「そっか! じゃあ、今日はなにして遊ぼうか!」
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