怪異のノア
林 木森(はやし きもり)
第1話 キャラメイク?
暗闇のなかに僕はいた。
手を見ても手は見えず、声を出しても聞こえない。
なんでこんな場所にいるのか見当もつかない。
ただわかるのは僕が何者かという記録だけだ。
途方もない道無い道を歩いていると巨大な鏡が目の前に現れた。
いや巨大というにな語弊がある。
それは境界線に天を貫く壁のような鏡があった。
暗闇なのに鏡には僕の姿が写る。
顔のない黒い輪郭、全裸であるが一本線で書かれた身体はくびれなく、のっぺりとして手足は丸くバランスは悪いはずだが上手く立っている。
なんだこれ?
僕は思わず鏡に手をつける。
黒い顔が僕を覗きこむ。
僕は目をつむる。僕はニンゲンだ。
息をのみ鏡越しではなく直接手足をみる。
袖から出る細めの手、濃紺の男子学生服に革靴。
鏡に映った姿と異なり、人間の姿にほっと撫で下ろす。記録には
……さて。
身体は間違いなく人間だ。確信をもって言える。改めて再度鏡を見た。
鏡には一人の姿があった。
醜くもかっこよくもない、平凡な顔立ち。
眠たそうな目、そう僕が、僕が?
「僕はだれだ?」
年齢も性別、学生時代までの人生経験。間違えなくある。だがなんだろうこの違和感。
鏡を見て手をつける。
手のひらから触れていた鏡にヒビが入る。
僕は割れる音に肩を一回揺らす。
ヒビは生き物のように広がり。割れた。
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