File3 Weapon in hand

 将人が殺害されて一ヶ月程経ち、セミがミンミンと五月蝿く鳴く土曜日の昼中。さとるの家に一つのチャイムが鳴った。

 悟は一階のリビングに背の低いテーブルを置き、二人一緒に宿題をやっていた中、紅音あかねが聞いてきた。

「何か買ったの?」

 悟自身あまり物を買わない方だったので紅音は思わず聞いてしまった。

「よし届いた」

 悟は、宅配便から届いたダンボールを受け取りキッチンの近くのカウンターテーブルに置き、早速開けた。その中に入っていたのは、小型拳銃だった。

「えっ!それ...買ったの?」

 紅音は恐る恐る聞いてきた。

「ああ、紅音知ってるか? 最近この近くでチャイニーズマフィアがアジトを作ったらしいんだ」

 紅音は口を開けポカンとしていた。

「後、将人まさとみたいなこともあるし。自分の身は自分で守るそして僕の力で紅音を守る」

 そう言うと紅音は少し顔を赤く染めた。しかしそれに見向きもせず、ダンボールから銃を出した。

「おぉ、かっこいいね。だけど危ないよ」

 少し目を輝かせたがすぐに顔の前で手をわたわたさせた。

「大丈夫。弾は抜いてあるから」

 安心させるようにそっとダンボールの中に入れた。

「宿終わらせるよ」

「はーい」

 悟は紅音と向かい合うよう、床に座り宿題の再開を促した。

「あれなんて言うピストル? いくらぐらいしたの?」

 しかし紅音は興味津々で聞いてきた。

「あれはBeretta ベレッタ nanoナノ。だいたい六万円ぐらいだったよ。だけど今の日本の法律だと弾倉マガジンに弾丸を入れていいのは、五発までって決まってるから専用マガジン買わないといけないんだ。だからもう一万円で七万円くらいかな」

「許可とかってどうしたの? 」

 日本は新しい法律で拳銃など猟銃以外の所持が許可されたが警察が行う研修を受けたり、前科がある人にはもちろん許可が下りなくなってる。紅音に秘密ですべて行っていたので不思議に思ったのだろう。

「まあ、僕の親は警官だったし、父さんの友達が融通を利かしてくれて早めに許可を下ろしてくれたんだ。あと明日は、その射撃講習があるから宿題教えれないよ。だから今日中に終わらせるよ」

 ひとまず紅音の質問には答えた。そして切れた集中を呼び起こさせた。

「さっそくだけど、ここの問題どうやって解くの?」

 ふっ、と悟は軽く笑い紅音の隣に移動し教え始めた。

「あぁ! なんでわらったの?」

 紅音は顔を赤くし、頬を膨らました。

「いやぁ紅音は変わらないなと思って...まぁいいや。これは、ここの公式を使うとできるよ」

 分かりやすいように説明してると視線を感じ横を向いた。

「なんでこっち向いてんの? 聞いてんの? わからない?」

 首を横に振り悟の横顔を見続けた。

「サトくんはかっこいいなと」

 悟は顔を赤くし、もう一度ノートの方向に目線を向けた。

「くだらんこと言わずにやる!勉強しないと高校出た後、何もできなくなるよ」

「いいもん、だって、サトくんに養ってもらうもん」

 得意げに紅音は悟に言い放った。

「はぁ。僕は学ぶことを放棄した人を養うのは嫌だからね」

 紅音は目潤ませ、無言でこっちを向いてきた。捨て犬の目だった。

「養われたかったら宿題やる!」

 はぁ僕は紅音の親か何かか? 小さく呟き、紅音に打開策を言い放ち宿題をやらせた。

「はーい」

 少し不満ありげな返事をし、渋々宿題を再開した。

 二時間程たった頃

「終わったぁ! これで宿題終了ぉ」

 紅音は集中を一気に切らして、座りながら腕を上げ伸びをした。

「すごい集中力だったね。いつもこれぐらい真剣に取り組んでくれると嬉しいんだけど...」

 すこし呆れながら軽く笑った。

「もぉ、少しくらい褒めてもいいんじゃない? 」

 頬を少し膨らませ紅音は愚痴を零した。

「はいはい、よく頑張ったね」

 棒読み気味で紅音の頭を撫でた。紅音は目を細め、さながら主人と遊んでいる犬の様であった。紅音を撫で終え

「まだ夕食まで時間があるし何かするか? 」

 悟は紅音に提案した。

「うーん...あっそうだ! さっきの銃の名前ってなんだっけ? 」

「beretta nanoだよなんで? 」

 悟に銃の名前を聞くと紅音は早速自分のスマホで調べ始めた。

「これ見てピンク色、可愛いね」

 悟にグリップ部分がピンク色の銃を見せた。かわいいと言う感想は少し疑問だったが、あまり自分が銃を持つことに否定的ではなかった為、内心ほっとしていた、悟であったが

「殺傷能力のある道具にかわいいってどうなの? 」

「可愛いものは可愛いの! 」

 悟は紅音に圧倒されてしまった。

「まったく女子はよくわからんよ」

「あっ!また私を馬鹿にして」

 また頬を膨らませ可愛くこっちを睨んだ。

「馬鹿になんかしてないよ。まだ時間早いけど朱音の家に行く?僕の家なんもないし」

「う、うんそうだね」

 二人は隣の紅音の家へ向かった。

「おじさんこんばんは」

 いつもと同じリビングの椅子に座り新聞を読んでいた。

「紅音はしっかりと勉強していたかね? 」

「はい、しっかり集中してくれて」

 二階から階段で降りてくる音がした。

「あら、お勉強は終わり?じゃあ早いけど夜ご飯の用意しないとね」

「手伝います」

 ニッコリとおばさんは笑った。

「さとちゃんありがとね。今日は紅音の宿題見てもらったし休んでいて」

「お言葉に甘えて」

 その言葉を聞き紅音が飛んできた。

「じゃあ映画見よ! 映画!この前録画したんだ」

「そんなに言うなら見ようか」

 ソファに二人で座り朱音が再生ボタンを押した。盛大なドラムロールととも海外の映画製作会社のロゴが流れ、映画が始まった。始まの数十分間まではしっかりと記憶があった。


「おーい もうご飯だよ。」

 紅音が元気よく起こしにきた。いつの間にか体に薄い毛布が掛けられておりすごく心地よかった。

「もう!なんで寝てるの?」

「あれ?もうそんな時間?」

 時計を見ると6時を過ぎていた。寝ぼけながらリビングの椅子に座った。

「やっぱりな、紅音、あの映画は面白くないって言っただろ」

 おじさんが予感が的中したのかニヤニヤしながら紅音に言った。

「えぇ?やっぱりみんなにはわからないのかな?面白いのに」

「わかるよ、紅音。あのおもしろさは女性にしか分からないのよ」

 おばさんが紅音の擁護した。

「はい、今日の夜ご飯は、ハンバーグよ」

 ついで夜ご飯を持ってきた。いつも通りおばさんの料理は美味しかった。

「明日は一日外に出るので昼はいらないです。夜には帰ってきます」

「あら、そうなのわかったわ。気をつけてね」

「悟くんはどっか出かけるのかね?」

 おじさんが聞いてきた。

「私用でちょっと」

 二人には心配させない為に銃の講習って事は黙っておいた。

 後片付けを終え、ソファに座りみんなで、バラエティ番組、クイズ番組を見た。

 二番組も見た為、結構な時間になっていた。明日も早い。悟は自分の家に帰ることにした。

「おやすみ」

「じゃあね、サトくん」

 今日は紅音が見送りをしてくれた。

 悟は手っ取り早くシャワーを浴びてすぐにベッドに入ったがすぐには寝付けなかった。別に暑苦しいわけでもないがなかなか寝れなかった。さっき昼寝してしまったと、自分で言い訳を思っていた。明日の射撃教習が心配で寝れなかったのは、意識下で悟は気付いていた。

























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る