第12話 砂漠の悪神
ミランダは中位スキル・
『これでチェックメイトよ』
だけどミランダの指先から
そのせいで、アリアナの体にまとわりついていた
「あれは……」
僕は思わず目を凝らした。
地面が盛り上がったのかと思ったけど、そうじゃなかった。
地面の中から青白く輝く氷の塊が出現してアリアナの体を押し上げたんだ。
「
そう。
あれはアリアナの上位スキル『
マップ上の1マスに氷の塊を出現させる、ちょっと変わったフィールド変化のスキルだ。
アリアナはそれを足元から出現させることで、ミランダの
『チッ! 何なのよ! この妙なスキルは』
ミランダは
アリアナはそんなミランダを追って
ミランダは詠唱を続けながら
アリアナは多少のダメージは覚悟の上らしく、回避もそこそこに体のそこかしこに
これを見たミランダは魔力で大きく飛翔すると、地底湖の湖面の上を
アリアナは水辺に突入してバシャバシャと足首の辺りまで濡らしながらミランダを追ったけれど、そこでやむなく追撃をストップした。
それ以上進むと水に足を取られて動くことが出来なくなるから、ミランダに
しかし湖上に移動するとは考えたな、ミランダ。
アリアナは跳躍力はあるけれど魔力で空中浮遊することは出来ないから、あれなら近付かれないぞ。
そして間合いが取れたことと追撃が途切れたことでミランダの詠唱は完成した。
僕は当然、それが何の詠唱だか知っている。
それはミランダの上位魔法だった。
『
ミランダがそう叫ぶと地底湖の中からこの場所に眠る巨大な悪の神が現れた。
それは真っ黒な甲羅で覆われた巨大なサソリの悪神だった。
『さぁ。そのハサミと毒針で魔道拳士の息の根を止めなさい!』
ミランダの命令に応じて漆黒の大サソリは湖面を飛び出して湖岸に立つアリアナに襲い掛かった。
全長5メートルはあろうかという大サソリは左右の鋭いハサミを横なぎに払った。
アリアナはバックステップでこれをかわすけど、大サソリはその巨体に似合わぬ俊敏さで次々とアリアナに攻撃を仕掛けていく。
左右から狙ってくるハサミをかわすも、長い尾の先についた毒針が上から打ち下ろされてアリアナを刺し貫こうとする。
だけどアリアナは的確な足運びで大サソリの攻撃を完全にかわしていた。
僕はそんなアリアナの様子を複雑な気持ちで見つめていた。
ミランダのことを応援してるけど、あの大サソリのハサミや毒針でアリアナがやられてしまうことを想像すると思わずイヤな気持ちになってしまう。
以前にもこんなことがあったな。
僕は以前に港町シェラングーンで繰り広げられた魔女ミランダと聖女ジェネットの戦いを思い返した。
あの時もこんな気持ちだった。
どちらにも負けてほしくなくて、でもただ戦いを見守ることしか出来なくて。
昨日、ミランダが
僕がこんな苦い思いをしているのは自業自得だった。
だからどんな結末を迎えようと、僕はこの戦いから目を
ちゃんと見届けないと。
大サソリの攻撃を見切って避け続けるアリアナだけど、回避するのに精一杯で反撃に転じることが出来ずにいた。
アリアナは時折、飛び道具である
やっぱりミランダの魔力が込められた大サソリの強さは並じゃない。
ミランダは大サソリに念を送り続け、アリアナへの攻撃の手を緩めない。
あれだけの悪神を制御するほうも大変だ。
『とっととくたばりなさい! 魔道拳士!』
ミランダは
そうして1分、2分が経過した頃だった。
『
アリアナは上位スキル・
大サソリは
そうか。
あれを防壁として使えば一時的に避難できる。
前にアリアナは言っていた。
ピンチの時はああして中に引きこもるのだと。
でもそれじゃあ逃げているだけで勝つことは出来ないけど……。
『フンッ。そうやっていつまでも隠れているつもり? まさか中でメソメソ泣いてるんじゃないでしょうね』
憤然とそう言うミランダだったけど、すぐに表情を変えて目線を上げた。
何だ?
モニターが大サソリの上の空間を映し出した。
何とそこには空中にいくつもの巨大な氷の固まりが発生していた。
あれは……
空中に生じたそれらは重力の法則に従って落下し始めた。
それらは1メートル四方ほどの立方体で、容赦なく大サソリの体に降り注ぐ。
頑丈な漆黒の甲殻を持つ大サソリもこれにはたまらず、押しつぶされてしまった。
そして巨大な凍土の
それは圧倒的な質量の圧力だった。
『はぁぁぁぁぁ!』
アリアナの声が鳴り響く。
大サソリの甲殻にひび割れが生じたのを見たアリアナが自分の周囲の
『
アリアナは真上から大サソリに飛び乗ると、
途端に大サソリの体が凍結して氷の塊と化し、アリアナの拳圧によって粉々に砕け散ってしまった。
ついにアリアナはミランダの生み出した悪神・大サソリを討ち果たしたんだ。
『チッ! やってくれたわね』
悪神を失ったミランダは湖上に浮かびながら再び
これを見たアリアナは瞬時に再び
途端にミランダの頭上に凍土の
『そんなもん喰らうかっての!』
ミランダは空中を浮遊しながら自らの頭上に落ちてきた凍土の
それでもアリアナは構わずに湖上に無数の
それらは次々と湖上に落下し、湖岸から一直線にミランダの元へと至る道を完成させた。
その光景に思わず僕はハッとした。
そ、そうか。
アリアナは足場を作ったんだ。
ミランダを直接攻撃するための。
それが狙いだったのか。
だけどアリアナの攻勢にもミランダは冷静さを欠いていない。
ミランダはアリアナのステータスを目ざとく確認していた。
『そんなに盛大に魔法を使って、もう魔力切れ寸前じゃない。ペース配分を誤ったわね!』
そうだ。
ミランダに比べるとアリアナの魔力の総量は多くない。
それはおよそミランダの半分以下で、戦いの序盤から多くの魔力を使っていたアリアナの魔力はもうほとんど底を尽きかけていた。
それでも構わずにアリアナは凍土で出来た足場の上を弾丸のように猛然と駆け抜けて、ミランダに向かっていく。
『馬鹿ね。一直線の道なら
ミランダは向かってくるアリアナに狙いを定めて
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