裏切りの勇者たち

アハレイト・カーク

第〇章 プロローグ&歴史

 遠く遙かな宇宙のどこか。ここはある星にある、魔族と人類が共存するオレイアヌス大陸。そこでは今、人類は存亡の危機に瀕していた。


      *   *   *


 魔歴1年、この世界を創造する始祖王オレイアヌスが誕生した。

 魔歴10年、エルフ、ドワーフ、ヴァンパイア、獣人、そして魔人などの魔族が生み出され、部族国家を経たのち、魔歴141年に魔族の統一国家、連合国家ローグレスが形成された。

 魔歴154年、始祖王オレイアヌスにより魔族の奴隷として魔人を基に人類が生み出される。しかし、魔歴991年、人類は魔族に対して反乱を起こす。これにより、当時の魔族統一国家グレイスベリー帝国は衰退し、大陸は戦乱の時代に突入した。

 魔歴1034年、後に神聖歴1年と呼ばれることとなる年。神聖セレナーデ王国の聖王ケインズが人類・エルフ族を統一し、国号を帝国へと変えた。また、魔族領との境界にラギーレの長城と呼ばれる壁の建造を始める。魔歴1176年、魔族領はヴァンパイアの賢王ローランド三世率いるロミリエーニ帝国、魔人の戦王エルフェリヒト率いるレヴィエイラ王国、ドワーフの法王マルク大王率いるサラウ=シュトリヒ王国の三国状態となる。そして魔歴1290年、エルフェリヒトの跡を継いだ覇王ガングリヒトの手により、魔族領はレヴィエイラ王国によって統一されることとなった。

 魔歴1293年(神聖歴239年)、レヴィエイラ王国は突如、神聖セレナーデ帝国に宣戦布告する。これに対し、神聖セレナーデ帝国は、人類・エルフの諸国家と同盟を結び、神聖連合を形成し立ち向かうも、破竹の勢いで進撃してくる魔族に対してラギーレの長城は突破され、魔歴1302年(神聖歴248年)には、神聖連合は領地の三分の一を失ってしまう。これに焦りを感じた聖王デュルム二世は、勇者を募集すべく、闘技大会を開催する。これにより、人類領ユーグ公国のオルギネ村出身、エレジア・イシュタールが勇者に選ばれた。魔王征伐隊のメンバーには、戦士のエレン・ストラトハイム、僧侶のエミリア・トールモンド、銃士のシエナ・レンハート、竜使いのミリィ・シュミットの4人が選ばれた。

 その後エレジアは、聖王から二本の聖剣のうち一本、「フラムシュベルト」を受け取り、人類の希望を背負って、レヴィエイラ王国の王都オージェラへの旅路に出た。

 しかし、翌年の魔歴1303年(神聖歴249年)、人類は衝撃の報告を受けることとなる。エレジア・イシュタールの裏切りにより、エレンとエミリアが殺され、残った、シエナとミリィの二人も魔族側に付いたというのだ。この報告を受けた聖王は、すぐに第二回勇者派遣を決定。再び闘技大会が開かれることとなった。それにより二代目勇者として、前大会二位でエレジアと同郷出身のオシェット・レイバーンが選ばれ、聖王より聖剣「リヒトデーゲン」を授かった。また、第二次魔王征伐隊のメンバーには、魔法使いのメロウ・フェレット、エミリア・トールモンドの妹である僧侶のルーシア・トールモンド、エルフ族の弓師でエル―ジャ王国の王女ユグドラ・ローグレス、賢者のルシオル・レオーニ、霊使いの少女リューム・カルティーニの5人がオシェットにより選ばれた。

彼らは、直ちにオージェラに向かった。

しかし、魔族領に入っても魔族側の攻撃はほとんどなく、オシェットたちはオージェラ城、謁見の間の前まで、ほぼ無傷で到達していた……。

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