第37話


「呪術を求めていた男の手がかり見つけないとな

 おっさん、呪術について何か知らないか?」


 先ほど求めた武器屋のおじさんに、声をかけるも、おじさんの顔はこわばり、声を潜めるように口を開く。


「何を求めてるか知らないが、呪術などと口にするんじゃない

 帰った帰った、用立てはもう済んだんだろ」


 その言葉に、カルダと相沢は肩をすくめ、見合わせるしかなかった。


「協、会、ならどうかしら」


「協会ね……行ってみる価値はありそうだな」


 意見のまとまった五人は、連れ立って石畳の坂道を上り協会を目指した。


 その協会は建物自体は質素な作りだったけど、その装飾には目を見張るものがあり、しばし見とれてしまうほどだった。

 また、窓には色鮮やかなステンドグラスがはめられ、ノークはそれをまじまじと見つめるのだった。


「ノーク君行くよ」


 まだ見ていたかったという顔をして渋々ついてくるノーク、その後ろにはミーナが引かれていた。


「こん、にちは……」


 協会には人影はなく、薄暗くひっそりとしていて、ステンドグラスから差し込む光以外は見受けられなかった。

 奥には女神像が祭られ、周りにはやはり細かい装飾のされたオブジェが並んでいた。


 五人はとにかく、椅子の並べられた通路を進み、奥へと進む。


 すると、タイミングよくというか、こちらが来たのを察したのか、正装に身を包むシスターのような人物が姿を現した。


「ごきげんよう

 私はシスターマリー

 あなた方のご用向きは?」


 そのシスターは、それほど年齢を重ねているという顔立ちではなかったけれど、それに見合わぬような丁寧な言葉づかいで話してくる。


「あの、呪術についてお伺いしたいのですが」


 相沢の問いに対し、シスターはそのきれいな顔をゆがませ、五人に待つように言うと、奥へと引き上げるのだった。





「神父様、また呪術を求める人間がやってまいりました

 いかがいたしましょう?」


「そ奴は人間か?」


「はい、人間が二人にドールが数名」


「分かった行こう」


 神父は顎を擦り、複雑な表情で考え込むようにゆったりとした動作でその場を後にするのだった。





「呪術を求めているというのはおぬしたちか?」


「いえ、私たちは、呪術を求めていた男のことを知りたいだけです」


 相沢の言葉に、神父は深く考え込んでしまう。

 祭壇の前を右へ行ったり、左へ行ったり、しばらくうろうろと。

 隼人たちはただその姿を見ているしかなかった。


 これ以上の手がかりもなかったし、あてがあるわけでもなかった。

 最も、カルダは、神父の口から何も出なければ、他を当たればいいと考えていたけれど。


 神父は、しばらくそのようにすると、ようやく口を開くのだった。


「お前たちには呪術を悪用するつもりはないのだな」


 五人はその問いに対し、深く頷いた。


「いいだろう、ついてきたまえ

 シスターマリー奥へ行く

 後を頼んだぞ」


「はい」


 神父はそう言うと、五人の先頭に立って歩きだす。

 石畳の廊下を曲がり、通路を抜け、階段を降り、彼らは地下室のようなところに案内されるのだった。


 そして、その真っ暗な室内のろうそくに一個一個火を灯していく。

 するとその部屋は光にあふれ、その中には、魔法陣のようなものが見受けられる。


 中央に大きな魔法陣があり、それを取り囲むように小さな魔方陣がいくつか等間隔で並んでいた。

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