第16話


 夜のとばりも下り、辺りはすっかり闇に包まれ、時刻は夜を示していた。

 空には無数の星が瞬き、ここの空が澄み渡っていることを知らしめる。

 天の川には流星がかかり、星が一つ生命を終えたことを知らしめる。

 月は煌々と輝き、彼らの行く末を照らす。


 相沢はそんな空を見て、思い出したかのように話し出す。


「二人とも知ってる?」


 ノークはなんだというように、相沢を見、隼人も少し顔を傾け、相沢の言葉に耳を傾ける。


「月の傍らでひときわ輝く星があるでしょ?」


 二人は空を眺め、その星を探しているようだった。

 そしてノークはその星を見つけたようで、嬉しそうに指をさして教えてくれる。


「実はね、あの星、月に憧れてるの

 月みたいに大きく光輝く存在になりたいって

 自分もいつかあんな風になりたいっていつも憧れてるの」


 ノークはすでに黙り込み、その声に真剣に聞き入っていた。

 ノークの頭で理解できるのかなと考えるのは少し失礼だけど、いつか役に立てばと思い

 相沢は話をつづけた。


「ただただ、憧れてる

 だけどね、よくよく考えると、月ってすごく小さいのよ

 おそらくは、その傍らで輝く星のほうがはるかに大きい

 傍らの星は、そのことに気づいてないのよ

 自分の大きさに気づかずに、ただ憧れてる」


 ノークは目を丸くし、隼人も耳を広げて聞き入っているようだった。


「傍らの星は、月よりもはるかに大きく輝けるのにね

 だけど、このお話にはおまけがあるの

 それは、そのどちらも他の存在に輝かされてるってこと

 どお?面白いお話でしょ?」


「だから、ノーク君も、隼人君もきっとその傍らの星なのよ」


 ノークは鼻を広げて、月を見上げた。


「僕も、いつか月になる!」


 相沢は微笑ましい光景ながらも、やっぱりノークには早かったかと思えるのだった。


 しばらく空を見上げて、少し眠くなってきた3人は、近くの納屋を見つけ

 そこで野宿をすることに決める。


 その納屋に入ると、明かりなどなく、中は真っ暗だった。

 手探りで納屋の中を探ると、幸い干し草のようなものがあり、それを体の上にかければ

 寒さはしのげそうだった。


 最も、温かい季節だったので、その必要はなかったのかもしれないけれど。


 ノークはひとしきり、干し草で遊ぶと、その中に滑り込み、すやすやと寝息を立て始める。


 相沢はというと、あったかいからという理由で、隼人に近づくも、隼人はそれを避け、

 離れていってしまうのだった。


 三人が眠ってしまうと、辺りは静寂に包まれ、草の擦れる音や、虫の音が空間を占める。

 空には相変わらず、星々が瞬き、それはまるで三人の行く末を祝福しているようでもあった。


 これからの困難を思うと、ほんの少しでいいから安らぎを感じてほしいと、

 そう夜空は願っているのかもしれない。

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