第11話
ノークはグリムを呼び出していた。
真相を突き止めて、というより、真実をすべて話して、また元通り仲良くしようと思ったからだ。
「グリム、いったい何があったんだ、僕は何もしてない」
グリムは話しかけられるも、難しい顔をして、ただもじもじとするだけだった。
一瞬何かを言おうとしたけど、それは言葉になるまでではなかった。
「君とは話してはいけないことになってるんだ。ごめんね」
そう言うとグリムは公園の中のみんなの元へと、去っていった。
そして彼らは口々に話し出す、それは声を潜めてはいたけど、ノークの耳に聞こえないほどの音ではなかった。
『グリム、ノークなんかと話してたのか?汚れるからやめな』
『あの子はもう死んだことにするから、話すと呪われるよ』
『あの子、屑だからもう話したら駄目だよ』
『あの子と話すと、それだけで犯されるかもな』
『キャ、やだ怖い』
『汚い、キモイ、やだー』
『もういないやつだし、話すのやめて、みんなで遊ぼうぜ』
そして、ノークを除いた7人はまた遊びに戻るのだった。
7人はまるでノークがいることなど気にせずに、いてもいなくても変わらず、楽しそうに遊ぶのだった。
『よしチャンバラやろうぜ』
そう言うのはアルベルト。
『今日は特別だ、こいつがノークだ、みんなでぶったたけ』
いつ用意したのか、木の棒に枕をつけたものをノークと呼び、それをたたくように言う。
すると、一斉にたたきにかかり、躊躇するものはなかった。
木が折れるんじゃないかと思えるくらい、思いきり殴ったり、突き刺したり。
それはとどまることを知らず、木が折れても、踏みつけたり蹴ったりと、これでもかというほど
ノークと呼ばれた枕を痛めつけるのだった。
ノークはそれをただ見ていた、ただ、その目は視点を失っていた。
そして、それを見ていたノークの中で何かがはじけるのだった――――
◇
そして、その夕方、公園――――
「た、頼むやめてくれ」
ノークの目はもはや尋常なものではなかった。
何物も受け付けることなく、血走り、ただ一点を見つめてるだけのようだった。
手に持ってた、果物ナイフを勢いよく振りぬくと、鮮血を上げ、グリムが地に伏す。
それは次々に続き、やがて、公園は血の海となるのだった。
そこに転がるは7つの小さな死体。
少し前まで、楽しそうに遊んでいた8つの笑顔は、もはや失われていた。
そして、最後にトビーが何か言いたそうに口を動かす。
ノークの怒りは収まらず、トビーに最後の一突きをお見舞いする。
しかし、トビーの口から出た言葉は……
「アル、ビノに、切られることが、こわ、かった……」
空は朱色に染まり、悲しみの雨を流す。
その雨はぽつぽつと物言わぬむくろに降り注ぐ。
雨に濡れたノークの目からは水滴が流れるも
それが涙なのかは定かじゃない。
空はそのすべてを見ていた。
それが良いとか悪いではなく、ただ見ていたのだった――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます