第11話


 ノークはグリムを呼び出していた。

 真相を突き止めて、というより、真実をすべて話して、また元通り仲良くしようと思ったからだ。


「グリム、いったい何があったんだ、僕は何もしてない」


 グリムは話しかけられるも、難しい顔をして、ただもじもじとするだけだった。

 一瞬何かを言おうとしたけど、それは言葉になるまでではなかった。


「君とは話してはいけないことになってるんだ。ごめんね」


 そう言うとグリムは公園の中のみんなの元へと、去っていった。

 そして彼らは口々に話し出す、それは声を潜めてはいたけど、ノークの耳に聞こえないほどの音ではなかった。


『グリム、ノークなんかと話してたのか?汚れるからやめな』


『あの子はもう死んだことにするから、話すと呪われるよ』


『あの子、屑だからもう話したら駄目だよ』


『あの子と話すと、それだけで犯されるかもな』


『キャ、やだ怖い』


『汚い、キモイ、やだー』


『もういないやつだし、話すのやめて、みんなで遊ぼうぜ』


 そして、ノークを除いた7人はまた遊びに戻るのだった。

 7人はまるでノークがいることなど気にせずに、いてもいなくても変わらず、楽しそうに遊ぶのだった。


『よしチャンバラやろうぜ』


 そう言うのはアルベルト。


『今日は特別だ、こいつがノークだ、みんなでぶったたけ』


 いつ用意したのか、木の棒に枕をつけたものをノークと呼び、それをたたくように言う。

 すると、一斉にたたきにかかり、躊躇するものはなかった。

 木が折れるんじゃないかと思えるくらい、思いきり殴ったり、突き刺したり。

 それはとどまることを知らず、木が折れても、踏みつけたり蹴ったりと、これでもかというほど

 ノークと呼ばれた枕を痛めつけるのだった。


 ノークはそれをただ見ていた、ただ、その目は視点を失っていた。

 そして、それを見ていたノークの中で何かがはじけるのだった――――





 そして、その夕方、公園――――


「た、頼むやめてくれ」


 ノークの目はもはや尋常なものではなかった。

 何物も受け付けることなく、血走り、ただ一点を見つめてるだけのようだった。

 手に持ってた、果物ナイフを勢いよく振りぬくと、鮮血を上げ、グリムが地に伏す。


 それは次々に続き、やがて、公園は血の海となるのだった。

 そこに転がるは7つの小さな死体。

 少し前まで、楽しそうに遊んでいた8つの笑顔は、もはや失われていた。


 そして、最後にトビーが何か言いたそうに口を動かす。

 ノークの怒りは収まらず、トビーに最後の一突きをお見舞いする。

 しかし、トビーの口から出た言葉は……


「アル、ビノに、切られることが、こわ、かった……」


 空は朱色に染まり、悲しみの雨を流す。

 その雨はぽつぽつと物言わぬむくろに降り注ぐ。


 雨に濡れたノークの目からは水滴が流れるも

 それが涙なのかは定かじゃない。


 空はそのすべてを見ていた。

 それが良いとか悪いではなく、ただ見ていたのだった――――

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