第3章_10 答えが見つからない…


何時間、こうしていたんだろう


幸世にあんな態度をとってしまったことを後悔してた



彼女にすべて話した方がいいのか…

でも、そうすれば、彼女もきっと苦しむ


何もなかったように過ごす方がいいのか

そんなこと…出来ない



答えが出ない問いを何度も何度も繰り返して

気がつけば外は明るみ始めてた




「ハ…ル…」


消え入りそうな幸世の声が玄関から聞こえた



「幸世!」



「やっぱり帰ってきちゃった

……ごめん。

私は…ハルの涙の理由を…聞きたいの

ちゃんと聞かなきゃ、このままでいい訳がないって思った」



「そうだよ…な」




幸世が隣に座るとひんやりとした。

きっと身体が冷えきっている、そう思うとすぐに抱きしめたかったけど、そうしてしまうと話せない気がした


気持ちを抑え、親父のこと、あの木のことを話した



「やっぱり…

ハルは…嫌だよね。そういうの」



「うん、別に裏切ったとか、そんなんじゃないからってわかってるんだけど…」



「でも、私だって」



「幸…」

「ハル」



手を伸ばしかけた彼の言葉を遮るように立ち上がった



「もう、朝になっちゃったね。

仕事あるし、帰るね」


「…うん」



静まり返った部屋にガチャンとドアが閉まる音だけが響いた



肩には幸世の温もりが微かに残る



強引に抱きしめれば良かった

離さないって言えば良かった



俺はいったいどんな出口を探してるんだ?



窓から射し込む朝日がいつもよりやけに眩しく感じた


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