第3章_9 心の鍵

幸世が言ってたこと

やっぱり気になってた。すごく


確かめるのは怖かった

でも、モヤモヤとしたままにしておくのも嫌だった


何があっても俺達は変わりないんだから




📱

もしもし、親父

この間さぁ、幸世のお母さんのこと聞いてたけど知ってる人なの?



いやっ、知らない



ほんとに?

隠さないで言ってくれよ

後になってわかるは嫌だからなっ



……



なぁって



知ってる



(幸世の予想が当たった)



そっか

っで、好きだった人…とか?



あー



もしかして、あの木



そうだな。



何だよ、っで、母さん亡くなって、そこに引っ越すって酷くないか?

まだ、その人のこと忘れてないってことだろ?



違うんだ、母さんは……



違わないだろ、母さんどんな思いで死んでいったんだよ



陽斗…だから、ここにいるのは



もういい




頭の中がグチャグチャになった

幸世のことは大切だ


でも…



自分でもどうしていいかわからない感情と幸世の顔が浮かんできて…



俺は息をするのが苦しかった

胸が…しめつけられる思いだった





「ハルー、いるのー?

どうしたの?電気もつけないで」



「……」



「何かあった?」



小さな手が重ねられると温かくて、自然と涙が溢れた



「ハル…」



頭を撫でて優しく涙を拭ってくれる



「幸世…」



「どした?」



「…今日は…帰ってくれないか?一人にしてほしい」



「え?…」



「ごめんな」



「うううん、じゃあ、私帰るね」



「ほんと、ごめん」




優しい彼が何でそんなことを言ったのか?


辛い時こそ、側にいてあげたいと思ってた

それが私じゃダメなの?



ハル、何があったの?と

強く問いかけるときっと話してくれるはず


でも、今夜はそれをしてはいけない気がした




息が白くなる寒い夜


私はグルグルと同じ事を繰り返し考えながらさまよい歩いた



でも、結局…またハルのマンションに戻ってきてしまった




お互いの思いが通じあってるって、信じてた

愛情という形のないものは時には不確かで計り知れない不安となる



愛する人の心を開く鍵は

何処にあるんだろう



そんなことを思いながら、彼の部屋のドアを開いた








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