第1章-1 気に入らないアイツと飴玉
人は空を見上げる時
何を思うのだろうか…
私はいつもオモウ
空は世界中、何処にいても繋がってる
誰かが見上げる空は
私が見上げる空
大学でスキー部に所属している私は毎年、雪の便りを待ちわびていた
シーズンに入るとスキー場周辺に建ち並ぶペンションや民宿に住み込みでバイトし、空き時間はひたすら練習する毎日を過ごす
部の中で何人かずつ、それぞれの宿に振り分けられる日
私は最悪な気分になってた
よりによってアイツと一緒だなんて…
やたらカッコつけてて冷たいあの男
畑野 一輝
3ヶ月間も1つ屋根の下なんて、どうしよう
でも、一緒に過ごすんだし、避けてても仕方ない
とりあえず、挨拶しないとね
自分に言い聞かせながら、ジリジリと近寄って、遠慮がちに声をかけた
「あ、あの、よろしくね」
「フッ」
はぁー?鼻で笑いやがった
ますます、気に入らない。偉そうに
最悪な印象が更に悪くなった
ほんっと、何なのよ
結局、アイツとは大したこ会話もしないまま、シーズンに入ってしまった
毎日、寝起きをするうちにそれなりに話すようになったものの、必要以上に話そうとしない
どこかバリアのよつなものをはってるアイツ
まっ、別に関係ないし…
宿の仕事は想像以上にきつかった
朝早くから働き、日中は練習、夕方再び食事の準備
自宅で親に任せっきりの生活をしていた私にとってはまさに修業とでも言うようなもので、体力も限界に近かった
何かふらつく…
遠くでアイツの声が聞こえたような……
気がつくと私は自分の部屋にいた
側に心配そうにするアイツの顔
いつもと違って柔らかい穏やかな表情
目を覚ました私を見て「良かった」呟くように言った
「あ…の」
声をかけようと口を開いたと同時に慌てて出て行ってしまった
入れ替わりで先輩が入ってきて、さっきの状況を聞かせてくれた
私は倒れてしまったらしく、一目散にかけつけて、アイツがここまで運んでくれたそうだ。
「畑野って、不器用なヤツだから、きついこと言うけど、ノンのこと大切な同期だと思ってるんだよ。
毎日、頑張ってるノンのことちゃーんとわかってんだよ」
と意外な言葉を聞いた
ほんとに?アイツが…?
ふと、頭元に目をやると飴玉が1つ置いてあった
こんな時に飴玉ぁ?
そう思いながらも何故かとても大切にしたくて。
胸の奥がチクっと痛かった
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