惑星の破壊者 (2)
「ズーカイ、やっぱり俺をまた仲間として連れていきたいのか?」
「当然です」
ハッキリきっぱり手短に言いやがる。
「お前に聞くのもなんだが、ジニアやザンカたちは相変わらずか?」
「相変わらずです」
その返答では会話が終わってしまうだろ、ズーカイ。俺もこの話題の振り方もどうかとは思うのだが。
「そうか、それは何よりだ。俺も二十億年もの年月眠り続けて、目覚めたのは実は最近のことだ。奇跡的にも身体は腐敗していなかったようでな、この通りだ」
「羨ましい限りです」
短い言葉に集約される。思えば、
「お互い同じネクロダストに入っていたのにな。何処で分かれたんだろうな」
「ジニアさんが言っていました。実は僕たちがネクロダストに入った直後、早い段階で攻撃を受けていたそうです。そこで損傷を受けてネクロダスト自体が分散してしまった可能性が高いと」
ゆったり口調で言葉を明確にしていく。簡潔に言ってくれるが、それは随分と緊急事態だったのでは。いや、そもそも俺たちはあの場に立たされた時点で死を覚悟していた。俺も確かにそのときに死んでいたんだ。
「そうか。なら、一歩違えればあるいは俺も
もしそうだったとしたら、今の俺も違う生き方を選んでいたのかもしれない。二十億年も前に死んだ奴が何を言っているんだという話だが。
「お前らからしたら俺も
「僕にはどうとも答えられません」
少しキツい言い方をしてしまっただろうか。
「ですが、ゼクラさん。おそらくあなたは真実を知らない」
「真実? ズーカイ、それは一体何のことだ?」
「今、この場で僕の口からは言えません。ただこれだけは確か。今ゼクラさんが生きていることは偶発的なものではあるものの、重要な意味があります」
こいつにしては、随分と含んだ言い方をしてくるもんだ。
「お前の言っている言葉の意味が分からない」
「すみません……」
ズーカイは結局何が言いたかったのだろう。言葉が続かなくなる。ズーカイもそれ以上出せる言葉の持ち合わせがないのだろう。
沈黙が訪れる。ズーカイを相手にして沈黙なんてそう珍しいことではないのだが。
「ゼクラのアニキ、身支度を調えました。準備万端っす!」
そんな気まずい静寂を突き破ってきたのはブロロを先頭にした一行だ。準備万端という言葉の意味通りに捉えるべきか、ブロロとシルルはいつの間にか甲冑を身に纏った完全防御態勢で現れた。
その後ろからついてくる眠そうな顔をしたキャナが拉致されているかのように見えたくらいだ。あの様子では、昨晩はあまり眠れなかったのだろうか。
「ふわわぁぁあ~。アンタがゼックンと同じシングルナンバーさん? よろしゅうにな。うちのことはキャナちゃんでええよぉ」
とりあえず二本足を床につけたまま、ふわふわとズーカイにカックンカックンと挨拶をする。こっちは寝起き過ぎて準備万端ではないのでは。
「僕はズーカイと呼ばれています。どうぞよろしくお願いします、キャナさん」
ふわふわに対してゆったりゆったりと返す。この二人、案外気が合うのでは。そう思ってみたが、握手を交わさない辺り、存外互いに関心はなさそうだ。
そして、何故かズーカイが俺の方に視線を送ってくる。それを言葉にする気は毛頭ないようだが、概ね何を言わんとしているのかは分からんでもない。
「んでぇ、どないするん? うちよう分かってないんやけど、一応姫様にも挨拶しとくん?」
「……姫様? それはビリア王女のことですか?」
徐に、ズーカイが反応する。なんだその、意外そうな言い回しは。
まさか、本物のビリア姫がこの城にいることを知らなかったみたいな。
それに気付いてか、キャナがハッとする。ブロロとシルルが顔を見合わせる。その表情は今は読めないが、何やら不穏な空気が漂っているような気がしてきた。
「ズーカイ。お前に聞きたいことがあるんだが、ザンカの奴はどの程度まで把握していたんだ?」
「僕はサンデリアナ国にいる王女が偽物であるということ、その偽物がゼクラさんと関わりがあること、そしてゼクラさんがこのブーゲン帝国にいることくらいまでしか把握していませんよ。まさか、本物のビリア王女がここにいるんですか?」
今、コイツ、ゆったりととんでもない爆弾発言をしなかったか?
ザンカめ、いつもいつも肝心なところが抜けていやがる。本気を出せばもっと明確に分かっていたことなんじゃないのか? なんだって一番重要なところまで解析が進んでいないんだ。
俺のせいか? 俺を優先しすぎたあまり解析の手を緩めたのか?
「ほえ? ど、どういうことになるん?」
「厄介なこじれた話が、もう少しこじれた厄介な話になった」
もしズーカイの言っている言葉がそのままで、ジニアもザンカもビリア姫の居場所を突き止めていないとなると、サンデリアナ国の方は荒れることだろう。
アイツらがどう報告するつもりなのか知らないが、立場上、ビリア姫が偽物であることを何処かしらのタイミングで言わざるを得ない。面目が潰れるのは王族親衛隊のアイツらだけじゃない。サンデリアナ国もとんだ赤っ恥だ。
本物がいることを知っていれば、取引の話にまでこじつけられるが、偽物の存在しか把握していないのであればそれもできない。
ちゃんと気の利いた言い訳を思いついてくれたんだろうな、ザンカ。
嫌な予感ばかりが頭の後ろの方をグサグサと刺してくるみたいだ。
そういえば。
「ズーカイ。さっきサンデリアナ国の方で事件があったとか言っていたな。その詳細をお前は知っているのか?」
これ以上、気分の悪くなる話がごめんだ。
「……昨晩、サンデリアナ国の首都からビリア王女が失踪したそうです」
おいおいおい、勘弁してくれ。
確かにソレは予定調和だったのかもしれない。
何せさらわれていったナモミの救出にエメラたちが向かっていた。とどのつまりはエメラたちがナモミを連れ出していったということなのだろう。アイツらは優秀だからな。
だがナモミが偽ビリア姫だとは俺も知らなかったし、これはとんだ盲点だった。
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