洞窟探索の準備 1

「俺はまぁ……Sランクだ」


スティラは口をパクパクさせ、学園長は完全に固まった。ギリスさんは苦笑いしている。


「……そういうことです。エリック様の実力はスティラ様もお分かりでしょうが、ランクについても今回の依頼に適しているとギルド長は判断しました」


ギリスさんが重くなった雰囲気の中、今回の人選の理由を話す。


「スティラ様に関しても剣術はヴァイス様が稽古をなさっていますし、普段の依頼の達成状況などを見ても適任だと判断しました」


「はぁ……あんた頭おかしいと思ってたけどここまでとはね……いいわ。今回の依頼、受けましょう。あんたもいいわよね?」


俺は頷いた。


「では依頼成立ですね。それと言い忘れていましたが他の方に協力をして頂いても報酬は変わらないのでご了承ください。依頼期限は1ヶ月です。では私はこれで、ご武運を」


と言ってギリスさんは学園長に会釈してから応接室から出ていった。


「……お、おい。アウィーズ君。君は本当にSランクなのか?」


Sランクというのを聞いてから今まで黙っていた、というか固まっていた学園長が話し出した。


「はい。先日、15歳になって初めて冒険者登録に行った時にレッドっていうAランクの冒険者に絡まれまして。それでそいつを倒して、試験官をギルド長自ら引き受けていただいてそこで合格して……でSランクをいただきました」


「なるほど。だから王城から報告があったのだな……」


「報告ですか?」


「あぁ。アウィーズ家のご子息が入学されるので御注意を、とな。レイモンドさんが入学した時はそんな通達なかったのでな。疑問に思いながらも例年通り準備していたらギルドの方がいらっしゃって、話を聞いたらアウィーズ君にも用があると言っていてな。それでさっきの話だ。もう言葉を無くしたぞい」


確かに陛下は色々手配しとくって言ってたけどこんなのまではいらないよ……


「まぁいい、すまんかったな。もう帰ってくれて構わん。気をつけてな」


俺とスティラは「失礼しました」と言って応接室を退出した。


「依頼の期限は1ヶ月って言っていたけどいつ行くの?」


スティラが廊下に出て直ぐに聞いてきた。


「俺は別に今からでもいいけど」


「はい?」


「ん?」


「あんた馬鹿なの?洞窟に行くだから色々準備して行かないとだめでしょ!」


確かにそうだ。普通、洞窟に行くとなったら洞窟内で一晩過ごすこともあるし、地上と違って運がいい限り叫んでも誰も来ない。そのため、ポーション等も用意しないといけない。


「回復ポーションと魔力ポーションならそれなりの数持ってるし剣もすぐ出せるけどそれじゃダメなのか?」


「はぁ……あんた、よくそれでSランクになれたわね」


なんか呆れられた気がする……


「Aランクの冒険者を倒しただけだったからな」


「はぁ……」


今度はため息をついた。

だって事実なんだし……

そんなに呆れらると傷付くんだが。


「まぁ、ポーションとかの準備はいいとして、もしかして2人だけで行く気?」


「え?そのつもりだけど……?」


「はぁぁ……」


本日三度目の特大ため息をいただきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る