独立兵団と闘技際

「明日からは通常授業だ。みんな忘れ物をするんじゃないぞ」


始業式を終えた俺たちは教室に帰って終礼を受けていた。


「それと、王立学園闘技祭の参加締切は今週いっぱいだから出る人は忘れずにこのエントリーシートにクラスと名前を書いとけよ」


「それから────」


再び先生の長い話が始まった。内容はもちろん聞いてない。


「ねね、エリック君」


肘をついてぼーっとしていると不意に横から声がかかった。


「なんだー?」


俺は気だるげに返事をする。


「エリック君は王立学園闘技祭出るの?」


「どうしよっか迷ってる。なんでだ?」


「いや、学園で話題になってるよ?3年のスティラさんと剣で勝負して勝ったっていう噂。しかも二刀流で」


「まじか。早すぎるだろ……」


だって2日前の事だぞ?学生の情報網こえー。


「それで約束したんでしょ?次は王立学園闘技祭で〜って」


「約束した覚えはないしむしろ向こうが勝手に言ってきたことだしな」


「じゃー出ないの?」


「いや、それを今迷ってたんだ。シェラは出ないのか?」


「私?私は出ないかなー。これといって何か出来る訳でもないし」


「まぁ普通はそうだよな」


「エリック君は少なくとも普通じゃないと思うよ?だってあのスティラさんに1回勝ってるんだから」


「いや、でも出るメリットがないしな。そういえば優勝したらなにかあるのか?」


「え?知らないの!?卒業したらヴァイス様率いる独立騎士団かに所属できる権利が貰えるのよ!?」


この国で『独立』と付く兵団はその兵団だけで1戦力として数えられるという意味だ。

本来なら剣術使いなどの前衛で1兵団、魔法使いの後衛で1兵団だが独立と付くのはその兵団だけで両方をこなせる、あるいは前衛、後衛のどちらかの戦力を必要としないで戦える兵団のことである。


リック侯爵率いる独立魔法兵団は簡単な魔法なら無詠唱で発動できる他、剣術に関しても一流ないし準一流。そして大規模魔法攻撃なら世界のどの国よりも頭ひとつ抜けている。


対してヴァイス率いる独立騎士団は剣術はもちろんのこと、各々ある程度の魔法や防御なども行える。

そして戦争の際にはこの2つの兵団が合併し王国守護騎士団となり、指揮権は国王になる。

まぁ、普段は独立騎士団は王城の護衛、独立魔法兵団は魔法研究などが主な仕事だ。


という説明をシェラから受けた。なんとなく想像はついてたけど思ったよりすごい。


「それに優勝しなくても国のお偉いさんの目に止まったら一気にエリート街道よ!だから将来のためにって参加する人も少なくないみたい」


「へぇ〜」


「それともう1つ。この闘技際の決勝の審判はリック侯爵様とヴァイス様がしてくださるの。そして優勝した人はそのどちらかと模擬戦をできる権利があるのよ!」


ふーん。ちょっと、いやすんごい興味出てきた。王立学園闘技祭、出てみようかな?




────────────────────

夏休み2週間、もうすぐ終わりかぁ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る