あの頃のトラウマ

今は夜の11時くらい。

みんなは寝ているが、精霊と悪魔はあまり寝ないらしくまた2人と1匹で体を動かしに行った。

今は宿に俺と、ルルと、ユイの三人でいる。

二人は先に寝てしまった。


俺はルルの横に座っている


「すぅ~~はぁ~~~」


ルルは可愛らしい寝息を立てながら寝ている。


俺はルルの寝顔に見とれていた。


ルルの頭を少しなでようと思い手を伸ばした。

するとルルは目が覚めたらしい


「エリック、何してるの?」


昔聞いたことのある声に近かった。

次の瞬間、あの頃のトラウマが蘇った。



あの頃(転生する前)の生活は酷かった。

金銭面ではない。

学校から家に帰ると、だいたい酔った母が家にいた。

家事などは一切やらないため、全て俺に任せっきりだった。

父もいるが普段は競馬かパチンコに行ってたまにしか帰ってこないというとんでもない荒れっぷりだった。


ある日、学校から帰ると父がいた。

すると父は


「おいだいき!俺は競馬で負けてイライラしてんだ!」


そう言うと俺のことを殴ってきた。

それだけでなく、うずくまっている俺のことを殴り、蹴りを繰り返した。

そこに母が起きてきた。


「何やってるのさ?」


「ムカついたから八つ当たりしてだけだよ」


「丁度いいや。私もストレス溜まってるんだ。」


そう言って二人で俺のことをボコボコにしてきた。

これはこの日だけでなく何回もあった。


そしてまたある日、学校が忙しくて家に帰るのが遅くなり、夜ご飯を作らずに塾に行った。

帰ると母が怒っていた。


「だいき!晩飯はどうした!?殺されたいのか!!」


母の手には包丁があった。

そして母は俺の手や足をその包丁で傷つけていった。


(もう嫌だ。死んだ方がマシだ!)


今思えばアイスを買いに行ったのは夏だからではなく、

家にいたら何をされるか分からないために外に出た。そして死んだ理由は交通事故ではなく、車に飛び込んで自殺・・・・・・



「ック!エリック!」


ルルの声が聞こえてきた。

俺はとっさにルルと距離を取り、部屋の隅で体育座りをして丸くなった。


「エリック、どうしたの?」


ルルが近づいてくる。

ルルを見上げると、母の顔だった。


(これは幻覚だ!そう!幻覚だ!)


そう思っても恐怖はこみ上がってくる一方だ。


「エリック!?どうしたの!?」



ルルSide

(エリックがおかしい!異常なまでに怯え、震えている。)


そう思い、私は手を出した。

すると余計に怖がっていた。

母性本能が働いたのか、気づいたらエリックのことを抱きしめていた。


「エリック、どうしたの?」


抱きしめているのでエリックの震えがより一層伝わってくる。


「ぐすんっ・・・ううっ」


「私が何かしたなら謝るよ?」


そう言うとエリックが口を開いた


「怒って、ない?」


「なんで怒らないといけないの?」


「俺、寝てるルルの、頭を、撫でようと、したから」


「そんなことで怒るわけないでしょ」


「じ、じゃあ、お母さんや、お父さんみたいに、殴ったり、蹴ったり、包丁で傷つけたり、しない?」


「え?」


エリックの口から出た言葉は意外だった。


「お母さん達がそんなことしてたの?」


「違う、地球に、いた時の、両親」


「・・・っ!」


(地球のエリックの親がそんなことを!?許せない!でも今はエリックを落ち着かせないと!)


「大丈夫だよ、エリック。あたしはエリックに撫でられるのは好きだし、少しくらいのイタズラなら大丈夫だよ」


「ぐすんっ、ほ、ほんとに?」


「ホントだよ、エリック。私は怒ってないよ」


そう言って私はエリックに軽いキスをした。


「だからエリックは怯える必要は何も無いんだよ。とりあえず落ち着こう、ね?」


「う、うん」


しばらくエリックのことを抱きしめているとエリックから力が抜けた。

見てみると寝ていた


(よかったぁ。)


「もう大丈夫だよ、エリック」


そして私はエリックをベッドまで運んで隣で一緒に寝た。



エリックSide

なぜあの時、いきなりあんなことを思い出したのか不思議だった。


(朝起きたらルルに礼を言っとかないとな。)



朝の8時頃



「ルル、そのー、昨日はありがとな」


「私はいいけど、エリックはもう大丈夫?」


「あぁ、おかげさまでな!」


「良かった。昨日のエリック、本当に怖かったんだからね!」


「ごめんって。」


「ま、エリックが元に戻ったんなら私はいいけどね!」


そこに他のみんなが合流した。


「おはようございます、ご主人様(主)」


「ニャー!」


「おう!おはよう!」



今日はダンジョンに出発する日だ。


「よし!準備が出来たら出発だ!」


そう言ってみんなはダンジョンに行く準備を始めた。

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