緑葉の少女たち
藤田大腸
プロローグ
四月十日。
緑葉女学館は六年制の中等教育学校という位置づけであり、正式名称は緑葉女学館中等教育学校という。私は世間一般で言うところの高校一年にあたる後期課程四年に編入した。
前期課程一年生、つまり中学一年生だらけの中で、たった一人の編入学生である私、
ステージには向かって左側に国旗、右側には植物の葉とペン先が×字状に重なった校章をあしらった校旗が掲げられている。二つの旗の間には
藤瀬みや氏は「女子に教育など必要ない」という風潮が色濃く残っていた明治時代、私塾を開いて女子に教育の門戸を開いたそれはそれはとても偉い御方だったとのこと。しかし老年期の頃の肖像画だからか、ボサボサの白髪に顔面に幾重にも刻まれた皺は失礼ながら山姥を思わせる。眼光は鋭く、私たち新入生を壇上から見下ろすさまは威圧的ですらあった。
「続きまして、宣誓文の朗読です。新入生代表、前期課程一年東組、
「はいっ!」
まだ幼さが残る一年生が元気よく返事して立ち上がった。きっと苗字が「あいこう」だから単にあいうえお順で選ばれたのかもしれない。
愛甲さんは緑葉女学館の伝統的な制服である深緑色のボレロとジャンパースカートに身を包んでいるが、サイズがやや大きめで手が袖に隠れている。彼女は教師に、来賓席に、私達に頭を下げた。ステージに上ると更に藤瀬みや氏の肖像に深々と一礼し宣誓文を広げて、
宣誓!
我々新入生一同は自由闊達自主創造の学風の下!
今はまだ若葉なれどいずれは緑葉繁る大樹となり!
日本国そして世界に貢献する女性となることをここに誓う!
マイクを使わずに大声で叫ぶようにして宣誓した。藤瀬みや氏の眼光に負けない堂々たる態度に、大きな拍手が送られた。
この瞬間、私は緑葉女学館のいち生徒となったのである。
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