第2話 8人の…
神崎の前に現れたのは美女だ。髪は金髪で長く、スラッとした体型に大きな胸。こんな美女がこんな離島にいるだなんで、思いもしなかった。いや、それよりも、神崎の目の前の美女は果たして『美女』としてカウントすべきなのか?何故なら、この『美女』は8人全員が同じ顔、同じ声、同じ体…全く同じなのだ。野球にしか興味がない神崎にとって、この光景はあまりにも驚いた。
「なっ…あ、あなたたちは…?」
「「「「「「「「そちらこそ、どなたですか?」」」」」」」」
8人の美女が一斉に問いかける。そもそも、女子と話すことが少なかったのに、8人一斉に話しかけられるのは、神崎には少し荷が重い。
「い、いや、俺は…春から入学するから、ちょっと下見に…」
「え?」「まさか…」「あなたが…」「入学する…」「野球で」「有名な」「彼女もいない」「神崎さん…?」
「7番目に喋った人。余計なお世話です」
「誰よ?7番目に喋ったの?」「私じゃないわよ?」「私だって違う」「じゃあ、そっちの私?」「あっちでしょ?」「私ではない‼」「うーむ?」「誰?」
自分同士と言っていいのか?同じ顔をした8人の美女たちの会話を聞いて神崎は更に混乱した。話し方も、仕草なども全く一緒。本当に何なのだと聞きたくて、神崎は勇気を出して尋ねた。
「すみませんが、あなたたちこそ、どなたですか?俺を知っているようですが…」
美女たちは会話をやめて、横一列に並んで自己紹介を始めた。
「「「「「「「「私たちは志麻 美智(しま みち)。私も春からこの学校に入学するの。ポジションは捕手以外守れます」」」」」」」」
そして、神崎を驚かせたのが次の一言。
「「「「「「「「私たちは全員、志麻 美智なの。クローンでもなく、全員本物なの。よろしくね‼」」」」」」」」
春風が志麻たちの言葉の重たさを神崎に届かせるように吹いた。離島での生活を始めることを伝えられたあのときの衝撃より、志麻8人が全員本物だということが、圧倒的な衝撃。
しかし、捕手以外と言って気づいた。
「あ、あんたたち…まさか野球を…」
「そうよ。ちなみに私はピッチャーね」「私がファースト」「私がセカンド」「私がショート」「私がサード」「私がレフト」「私がセンター」「私がライト」
「「「「「「「「私達が林明高校野球部。捕手はあなたね」」」」」」」」
神崎の高校野球生活は、今までにない、あり得ないような現実で始まった。
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