けものフレンズ~Story of three years after~

みずかん

第1話 はじまり

私は"或る能力"を手に入れたのです。


この力は・・・、とてつもない物だったのです。


大型のセルリアン。

セルリアンハンターに依頼して駆除してもらわないといけない存在なはずですが、

信じられないことに自分一人で、倒してしまった。


普通に戻りたい。一時期はそう思いましたが、

自身の力を研究しているうちにみるみるうちにその力の凄さに魅かれていきました。


この力で皆を守れば、長としての評判は高まる。


私は直ぐに行動を始めました。


困っているフレンズを助け続けた。


それに賛同するフレンズも増え、私は力を希望する者に与えました。


そして、それが"彼女たち"がこのエリアから去った3年間の間に起こった出来事なのです。






「きょうしゅうは久しぶりだねー」


サーバルが海風を浴びながら僕に呟く。


「そうだね...」


「アライさんも楽しみなのだ!」


「落ち着きなよ~アライさーん」


そこには変わらない日常があった。

あの者に再会するまでは。


僕はやはり、この島に帰って来たのだからと、図書館に行く事を決めた。





「久しぶりです博士さん!」


僕が図書館の扉を開けると、驚いた様子でこちらを振り向いた。


「かばん!サーバルたちも!」


「お懐かしいですね」


助手と博士が、そう言葉を漏らした。


「二人とも元気そうで...!」


「久しぶりに料理が食べたいですね」


「そうですね、助手」


そう言ったので思わず微笑した。

まあ、彼女らがそう言うと予見できていたので、僕はサーバルたちを

連れて外の料理場へと向かいカレーを作った。


彼女らに差し出すと物凄い勢いで食べ始めた。


博士と助手はひと通り食べ終わり、


“満足です”と言った。



その後図書館の外でかばんは食器の洗いをサーバル、アライさんと共に協力して行っていた。

フェネックも遅れて手伝おうとすると、肩を叩かれた。


「フェネック、ちょっと話があるのです」


「どうしたの?博士」


「こっちに来るのです」


フェネックは博士に招かれるまま、

図書館の裏手、人目のない所まで連れてこられた。


「ねぇ、話って何?」


何故自分なのだろうと疑問に感じていた。


「かばんは、知恵のある者です。

元々ヒトという生き物はそういう生き物ですが...」


唐突に語り始めた博士に戸惑いを隠せない。それに趣旨がわからない。


「美味しい料理を作ってくれるのは有難い事ですが、それは知恵の恩恵です。

知恵より勝るものがあるとしたら、それは何ですか?」


「勝るもの...?」


博士はフェネックに考える時間を与えなかった。


「それは“力”なのです。知恵と力は大きく異なります。

力は凄い物です。物理的に大きな影響を及ぼします。

その力を、知恵を持つものが力を手に入れる。

そして、そこに地上最強の権力者が生まれるのです」


「何が言いたいの...」


「要するに私は、かばんを消したいのです」


その言葉はますますフェネックを混乱させた。


「え?何が何だかさっぱりわからないよ…。だいたい、博士だってかばんさんに色々お世話になったでしょ?」


「ええ。それはよく覚えています。だから、私はあなたに頼んだのです。

恩を仇で返したくはないのです」


「ちょっと待ってよ。私だって恩を仇で返す事になるじゃん」


フェネックはすぐに反論した。


「私は、権力者になる事を決めたのです。

この力でパークを治める。

そして、最終的には外の世界までを手の内にする。

フレンズの中には人間によって種が絶滅してしまった者や、虐待された者もいます。

私はそういう者を救いたいのです。

ですが、かばんがきっと私の思想を聞いたのなら、それはいけないと反論するでしょう。それが私は気に入らないのです。もし、私が手を上げたら私の評判が落ちてしまいます。だからあなたに片棒を担がせようとしているのですよ」


長々と説明をしたがやっぱり理解ができない。フェネックは大きな溜息を付いた。


「とにかく私はそういうの興味ないから...」


立ち去ろうとした。


「待つのです」


「何なの...」


「特別にいい物を見せてやるのです」


博士は手を上げた。


「えっ!?」


フェネックは驚く。

自分の体が浮いているのだから。


その様子を博士はクスクス笑いながら見つめていた。

そして、そっと降ろした。


「こ...これって...」


「これが私の手に入れた力なのですよ」


またクスクスと笑った。


「こんなことかばんに出来ますか?

私は先程も言ったように直接手を下すのは嫌なのです。

フェネック、あなたが私に協力しないのなら...代わりにアライさんを使いましょう。あの子なら純粋に力を受け入れるでしょうがね」


「ねぇ、どうしちゃったの?博士は優しい人でしょ?」


フェネックは真っ直ぐに博士を見つめた


「聞いていればかばんさんを消すだとか...意味わかんないし...」


「私は今でも心優しいですよ。この力でフレンズを助けているのですから」


「かばんさんを除け者にしようとしているじゃん。除け者居ないんじゃなかったの?」


すると博士は目付きを変えた。その瞬間、フェネックは違和感を感じた。


「ッ!?」


身体が下に引っ張られる。


「うあっ!」


フェネックは地面にうつ伏せに叩きつけられた。

博士は笑いながら、答える。


「力を持たない者は力を持つ者に支配されるだけで良いのですよ…」


フェネックは立ち上がろうとするも起き上がれない。


「どうです?この“重力を操る力”は

この能力さえあれば、あなたのアライさんを地球の外に飛ばすことも出来るし、あなたの様に地面にひれ伏させる事も出来る」


「っ...やっぱり...おかしいよ…博士は変わった…」


息苦しく声をあげた。


「かばんが自分の意思を貫いた様に私は私の正義を貫き通そうとしているだけです。あなたが私の計画に賛同しようがしまいがあなたの自由ですが、ここにいる間は用心しといた方がいいですよ?」


「苦しい...」


フェネックは息を乱しながらそう訴えた。

引力を強められているので、呼吸をする器官の管が細くなって息苦しくなっていたのだ。


「協力するというのなら...」


「協力する...からさ...!」


博士はパチンと指を鳴らした。

そして息苦しさからは解放された。


「はぁ...はぁ...」


「能力をあなたに授けるのです」


そう言うと、近くにあった木の枝を取り、模様をフェネックの周りに書き始める。

フェネックは呆然と立ち尽くすしかなかった。

円陣を書いた。

何かを召喚する為の魔法陣にも見える


博士はフェネックに近づくと左腕を持ち、彼女の手首の少し下をじっと見る。

フェネックは博士の物とは思えない恐ろしいオーラを感じ、その場から逃げる事も、立ち去る事も出来なかった。


「ちょっと我慢してください」


そう言うと博士は目を光らせツメで彼女の皮膚を横一線に切り裂いた。


「痛っ...」


フェネックは顔を顰める。


「私もやりました」


そう呟き、傷口から出てきた血を自身の指につけて、地面にその血を擦りつけた。


すると博士が書いた円陣が光り出す。

その光はフェネックにも伝わり自身も光出したのだ。


「なに...これ...」


「黒魔術ですよ...。あなたの血液と引き換えに能力を得るのです。

その力は絶大。これであなたも私達の仲間ですよ」


悪い目付きというのだろうか

そういう目でフェネックを見つめた。


「力を手に入れたフレンズが全ての生態系の上位に立つのです。

そして全ての世の中をフレンズの為の世界にするのです・・・」


その場を去ろうとした博士に、こう言った。


「博士の話...、私は全部鵜呑みにしてないから」


「フフッ...、そうですか。難しい事を言って前より賢くなりましたね

あと、ちゃんと約束を守ってくださいよ?」


博士は図書館に戻って行った。



「くだらない...。力なんて...」


自分の左腕を見たが、傷口は消えていた。

その傷口には光る物。サンドスターではない。


(これは...?)






「フェネックを無理矢理引きずり込みました。かばんも時間の問題でしょう」


「どうせ嘘と真実の混じった言い訳をしたんですよね」


「当たり前じゃないですか...。歯向かったんですから」

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