どんな怪事件も冒頭一行目で解決してしまう名探偵・真田一行目とその助手の少女を中心に繰り広げられるミステリーです。
ミステリー……果たしてミステリーなのか、これは……?
いえ、間違いなくミステリーでしか成立し得りえないジャンル小説です。
探偵とは事件を解決するものであり、探偵小説・推理小説といえば依頼が来て事件があって証拠を集めて推理してそれを披露して……という流れがあることを前提としたうえで、それらをごそっと省いてしまったのが本作品になります。それで物語が成立するのか!? とも思ってしまいますが、これがなかなかどうしてテンポよく、毎回秀逸な小咄のようにストーリーは進んでいくのです。「お約束」を踏まえたパターンの連続ながら、するすると飽きさせずに読ませます。
事件があるところに探偵ありなどとも申しますが、探偵があるところに物語がある、つきつめれば、そこに謎やトリックや事件後の犯人の独白などは些細な要素でしかなくなってしまうという……。
ミステリーやサスペンスのあるあるネタも楽しいです。犯人はだいたい奥さん。
連作短編というスタイルを採っており、一見するとバカミスのショートショートのようでもあるのですが、読み進むにつれてどこまでがメタネタでどこまでが物語の本質部分なのか曖昧になっていく描写は幻想小説のようでもあります。
探偵は第四の壁を越えられたのかそれとも――――。
最後はちょっと泣ける。
おススメです!