第8話 台本通り殺人事件 後編

「何だ、これは?」


 何も書かれていない均等線だけの台本を見て、真田は訝しげに首を傾げた。女学生が慌てて台本を確認した。

「嗚呼、すみません! 事件のトリックばかり考えていて、話のオチを全く考えていなかったです!」

「何だって?」


 慌てふためく女学生の横で、絵里が少し意地悪く笑って真田にペンを手渡した。

「そうだ先生。どうせなら先生が、好きなように書いて下さいよ。何てったって先生は本物の探偵ですもん……これくらいの事件、いくらでも現実で解決してきたでしょう?」

「おいおい……」


 騒ぎを聞きつけて、学生達が練習を中断して舞台の上に集まってきた。皆の視線が、一斉に真田に向けられる。

「いっそ夢オチにしますか、楽屋オチにしますか。鬱エンドが良いですかね? それとも台本通りハッピーエンド?」

「殺人事件にオチなんてないよ……全く」

 舞台の中央で、真田は白紙の台本にとりあえず一番言っておきたい台詞を書き込んだ。


                                               

「犯人は貴方ですね、奥さん」 』

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