スカイツリーが見える空に

流々(るる)

ある晴れた日の朝

「やっぱり、冬の空はいいなぁ」

 東京も冬は空気が澄んで空がきれいに見える。夜空ならオリオン座をはじめとした星々がきれいだが、何と言っても晴れた日の青空は美しい。視界には雲一つなく、青一色に塗られたキャンバスをビル群の輪郭で切り取っているこの景色が好きだ。

 停まっていた橋の上から、再び自転車をこいで行く。



 東京・下町と呼ばれる地域は、碁盤の目のような街区がいく割が多くみられる。京都と同じように南北、東西に直行した道路は、政治的に作られた町を示す証だ。私たちはと呼んでいるが実は運河として作られていて、道と同様、街中まちなかをまっすぐに伸びている。

 川の水位よりも地盤の方が低いため、防波堤のような護岸に覆われている。そのため、橋は神社にある太鼓橋のように高くなっていて、大きなものだと家の二階より上方を通っている。橋の上からだけ見える水面も、昔に比べて随分ときれいになった。私の小さい頃はどんよりと濁って時折ガスが発生していたけれど、今では魚影も見えるし水鳥もやって来るようになった。


 今朝も川沿いの道を、右手に護岸を見ながら事務所へ向かって自転車をこいで行く。やがて、左手にいつもの集団が見えてきた。

「おじさん、おはよー!」

「おじぃ!遅いっ!」

「待って、おじさーん」

「おはよう、おじさん」


 また、いつもの一日が始まる。

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