新年のご挨拶
カゲトモ
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「明けましておめでとうございます」
「おめでとうございます、本年もどうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
手水舎で手を清めていると、至る所からそんな挨拶が聞こえる。俺自身はこの土地の人々と関わり合いがないから、声を掛けられることもないが、両親は色んな人に声を掛けられていた。
氏神様がいらっしゃるこの辺りで一番大きな神社は大賑わいだ。
有名な神社のように出店が並んでいるわけではないが、甘酒が振る舞われみんなで火を囲んで団らんしている。古き良き初詣、とはこういうことを言うのだと思う。
両親は近所の友達と話が盛り上がっているようなので、一足先に参拝の列に並ぶことにする。
何を神様に言おうか。
昔は初詣と言えば、神様に叶えて欲しいことをいくつもお願いしていた。いや、割と最近までそうだったのだが、それは間違いだと言うことをミクリさんに教えてもらった。占い師とはやっぱり、そう言った神秘的なものに精通しているのかもしれない。
『神様にお願いをしてはいけません。報告と誓い、そしてお力を貸して頂くのです。願うのではなく、見守って頂くのです』
だからこそ、感謝を忘れてはいけません。
そう言われた時、ふと昔教会でお祈りをしていたことを思い出した。そういえばイエス様にお願いをしたことがない。俺自身、洗礼を受けたわけじゃないが、子供のころ教会へ遊びに行くと、友達と一緒によくお祈りを捧げたり歌を歌ったりした。
『どうかお守りください』
口にしたのはこれだけだったと思う。友達やシスターが言うのをまねしていただけだったけど。
同じ“神様”と言われているのに、そう言われれば全然違う。神社でお賽銭を入れて鐘を鳴らしたら『ゲームがほしい』とか『彼女が欲しい』とか『合格させてください』とか『店が繁盛しますように』とか。良く考えれば図々しいお願いなわけで。
“報告と誓い、そしてお力を貸して頂く”
神様には自分がこうなりたい、こうしたい、だから頑張るので力を貸して下さい、と言うべきなのだ。それから『いつもありがとうございます』と感謝をする。
こうやって健やかに生きていられるのも見守って下さっている神様のおかげなのだから。
なんて。ミクリさんに初めて聞いた時は『店を繁盛させてください』なんて、神様からすれば“他力本願してんじゃねーぞ! 頑張るのはお前だろ! 力は貸してやるからやってみろ!”って思われているんだなぁと思って、なんとなく納得した。そりゃ考えて行動しなきゃ、店だって繁盛しない訳で。
結局、結果をもたらすのは自分なのだから。「お先でした」
「どうも」
いつ見ても立派で綺麗に手入れされた本殿だ。賽銭箱に五円玉を入れて鐘を鳴らす。二礼二拍手して――。
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