三八式歩兵銃
第20話疑問
「ねえ。なんで歩兵銃なの?」
自分の部屋で寝転がりながらきのこの山を食べていた麻美は唐突にキューピッドに聞いた。
キューピッドはいつものように麻美のベッドの上で、たけのこの里を食べながら抱き枕を撫でていた。
それは抱き枕で手を拭いている風にも見えない事はなかった。
「え? 歩兵銃がどうしたって?」
キューピッドは驚いたような顔をして麻美を見た。
「だからぁ、なんで弓から歩兵銃に替えたのかって聞いているの」
「え? ああ……何故かだって?……前にも言ったじゃん。もう弓矢の時代ではないって」
そう言いながら彼は抱き枕をさり気なく壁際に押しやった。
近頃、キューピッドはこうやって麻美の部屋でくつろぐことが多かった。
「うんそれは聞いた。でも、なんでそんなに古臭い散髪歩兵銃なの?」
麻美はきのこの山をまた口に放り込みながら聞いた。
「だから三八だって。三八式歩兵銃ね。髪を切ったりしないから。勿論シャンプーもしないからね」
キューピッドは笑いながら、たけのこの里を口の中へ同じように放り込んだ。
二人は完全に茶飲み友達状態になり果てていた。
「そう、それ。それって昔の日本軍が使っていた銃なんでしょ? 世の中にはもっといい銃があるでしょ?」
「まあ、そうなんだけど……」
「ゴルゴさんなんてM-16なんて凄い銃を持っているんでしょ?」
「よく知っているね」
「お父さんに聞いたの」
「成る程」
「だからなんで三八式歩兵銃なの? もしかして古い銃のマニアとか?」
そう言うと麻美はきのこの山を頬張った。
「違うよ」
キューピッドは負けずに、たけのこの里をまとめて口の中に放り込んで音を立てて食った。
そしてお茶をすするとふぅとため息をついた。
「昔……そうまだ麻美が生まれるずっと前の話……」
キューピッドはぽつりぽつりと記憶の糸を手繰る様に話し出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます