しゅあんしー、ダブルハピネス

 汚れとは、外面的なものと内面的なものがある。汚れるなら、中だけであってほしい。内側からドス黒いものが溢れ、血液でそれが循環されていく。時間と共に、生きるほど、黒くなってゆく。錆び付く世界。セピア色。フィルム。古い映画の主人公となって、街を彷徨う。雨が降れば、傘を差さず、ポッケに両手を突っ込み、猫背で歩く。フードだけが、私の相棒。ガムだけが、私の親友。ミントの香りが、口にふわり。


 痛みなどの刺激がないと、「生きている」と実感できない人が、存在する。幸せは、無感覚。緩やかに、死へと近づいていくような気配がする。だから、多分それを手に入れようと、躍起になるのかもしれない。安心は、死神だ。


「マ?」「ガ?」「それな」「ダヨネー」

 未来の会話はより、短縮化されていくのかもしれない。単語でのみ、会話するようになる。いやだなぁ、寂しいなぁ。


「草」

枯れろ生きて。」


 辞書とかでよくある文。

「また、そういう性質。」

 これが、好き。


 紫蘇スカッシュ。「炭酸で割るか、水で割るか。どっちにします?」「……ぇーと、炭酸でお願いします」「はい、炭酸ね」

 サワーチェリーのコンポートの味がした。


 ライムスカッシュ。ヨーグルトスカッシュもあった。けど、ヨーグルト苦手だから、爽やかライムに。スプライト的な匂いと、ケミカル感溢れる色が来た途端、弾けた。ふわぁああ……ぁあ。

 美味しい。

 おばあちゃん、好きぃ。


 自らを「聖人」と思い込む人は、破綻の道へ進む。そう思った、今日のバイト。雨が冷たく、スニーカーを濡らす。


 家に帰り、肉なしの青椒肉絲を作る。何か物足りなく、きゅうり一本に塩をかけて、丸かじりする。すると、真横にあったカーテンから「じりりっ」と音がした。驚きながら、きゅうりを片手に、そこら辺にあった扇子を持って、向かう。ドキドキする胸、閉まっているカーテン。怖い。友人にメールを送るも、既読が付かない。こわい。試しに声をかけてみる。「正体を表せ!戦ってやる!」(本当に言ったこと)

 むりぃ、こわい。お母さんから「おやすみ」とのメールが友人の代わりに、届いた。マミーはもう、使えない。きっと電話しても「何言ってんのよ」と呆れられるだけ。うわぁああ!!!わかんない!!!!

 と騒いでいる間に、友人から連絡が。「おばけじゃね。」やら「妖怪だよ」「百合の妖精」とかべらべらぁ。むっ。虫だわ、ぼけっ!!!こわいいい!!!









 正体、わかった。















 カナブンだった。

 私、カナブンごときに騒いで、怖がってた。

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