腹が熱帯。(ごじった)

 私は決めた。悪女になってやると。もうこれ以上ないほど、波乱万丈な人生を送って「マジかよっ!?」っていうぐらい、驚かせてやる。私は、決めた。

 ということで、先生にメールを送った。内容は「私、不二子ちゃん目指すね」の一文のみ。ルパンの悩むスタンプが送られ、「不二子という女」を進められた。流石だなぁ。めんどくさがって、深く聞かないところ。いいなぁ、憧れる。


 悪女になると宣言してから、一日だった。

 未だ、悪女らしいことをしていない。考えつくことは、お客さんに笑顔を振りまき、たぶらかしたことだけ。けど、私は、接客をしたのみ。


 悪女ってどうなったらなるんだろう。師匠にも聞かれたことを、思い出す。わかんないなぁ。とりあえず「素質とか……?」と答えてあげたけど、なんだろう。一歳にも満たない妹を見ながら、すごいなぁ、可愛いことしてるなぁ、教えてほしいなぁって思ったから、いけないいけない。


 ぐらんぐらんになるまで、酔いつぶれて、あなたの胸の中で吐息を吐き出す。嫌がりながらも耳の奥から浮遊感。ふわり、ふわり、目が回る。不思議の世界に迷い込み、あなたは熱を帯びた瞳を向ける。粘り気。液体。唾液。体液。ぐねり、どろり、しゃぁ。ぁ。


 嫌だなぁ。床まで当たりそうなほど、長いワイドパンツを履く時。引きずるように、雨が降る。ずり、ずりり、ずるっ。揺れていく丈を感じて、急いで家路を走り出す。水溜りに気をつけて、ぱしゃぱしゃ傘が、私を応援。やっと着いたと思ったら、丈はべちゃぁー。


 ジェントルマン。たまにキャビンアテンダントみたいなスカーフを首に巻いている。面白い。流石だなぁ。変だけど、似合ってる。


 寝ている時に、ベロを噛んじゃって、噛んじゃってるまま寝ちゃって、起きたら腫れちゃって、痛い。ご飯が美味しく感じない。チーズケーキを慎重に食べる。むしゃり……むしゃり……むしゃり。嫌だなぁ、ほんと。


 私に恋愛の相談は、間違っていると思う。出来るだけ、そういうことから関わらないよう、逃げてきた人だからね。そんな人に相談しても「そっかー」としか言えないもので、いい加減、そいつは駄目な馬鹿だから別れた方がいいのに、ずりずり。ずりずり、三ヶ月。

 馬鹿だなぁ、ほんと。けど可愛いなぁ。ずるい。彼女の吐き出したアルコールが、鼻孔をくすぐる。トロピカル。パインアップル。


 貸してくれた(というよりも忘れ去られた)本を読んでいた夜の二十三時。そいつの匂いがして、騒がしい。本の存在が、騒がしい。そいつの金髪みてぇーだな。(もう違うけど) 騒がしいなぁ、めんどくせぇな。

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