素敵な翼を持つ、彼を思い出して——
自分だけ、取り残されたような感覚に陥って、涙がこぼれた。無駄な涙。
どうして、泣いているの? 無垢な子供も尋ねる。
わからない。自分でも、なぜ泣いているのかわからないの。ただただ悲しくて、寂しくて、恋しくて、切ないの。 酸素不足のせいなのか、疲れのせいなのか、ぼーっとしている自分が答える。
変なのー。ベニはね、そんな時はインコの隣でね、あのねあのねってお話をするの。 晴れた空色の羽をしたセキセイインコと、毛布を被って隠れている女の子。
そう、私にはもう、相談に乗ってくれる青空の妖精も、涙を隠してくれる魔法の毛布もないの。どうしていいかわからなくて、どこから話せば、誰に話せばいいのかも、わからなくなってきたの。 膨らみかけた半月を背に、カーテンを締め切って、息を殺す。
そうなんだー。なら、新しく見つけちゃおうよ。きっといるよ。もっと目を凝らして、酸素を巡らせて、声を上げて。ベニはね、インコがね、本当は何一つベニの話してることをわかってないって、知ってるの。けどね、それでも教えてあげるんだー。何があったのか、どう思ったのか、インコが大好きだってことも。そしてね、最後にはありがとー!って伝えるの。
ふふっ、そうね。妖精の歌声、初めて撫でさせてくれた感動を思い出し、笑いが込み上げた。大丈夫。取り残されたんじゃない。これはただの休憩。大丈夫。
ベニはね、すごいんだから! 宇宙飛行士にだって、魔法だって使えるの。お話をたくさん考えられて、ずっと水の中にいることだって、できるんだー! 走るのだって、すっごい速いんだよ!
うん。
だからね、泣かないで……。
うん。
ね?
うん。
ほんと?
うん、もう泣かない。
いい子にしてる?
うん、頑張る。
じゃあ、もう寝よっか。
うん、もう寝る。
おやすみ。
おやすみ。ありがと。
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