でっかい紙に色を垂らして、教室の中を徘徊する。

 結局、ドラマの単位は要らないみたいで、それでも楽しかったから、入ってよかったと思ったし、美術の授業は一個も取れないまま。私の好きな教室は美術室で、私の作品がいくつか飾られていて、発泡スチロールで作った頭蓋骨と目が合うたびに、やぁ久しぶり、元気だった?とチビッコたちに盗まれた目玉を思い出す。先生の机の脇にある、窓辺にぶら下がっているCDを見て、夕日に反射する光に殺されかかり、スカートとスニーカーのせいであぐらがしずらいから、欠伸だけして、隣で動画を編集していた友人に頭突きする。私にもやらせて、なんて言いたいんだけど、面倒いから、隣でちょこちょこと変なアドバイスをして、安心させることしかできない。

 あー今日も眠いなー。

 すごい集中してるなー。

 会うたびに「元気?」とバカ丸出しの質問をしてくる男子と同じことを聞きそうになり、出てきそうな言葉を飲み込んで、ずり下がった靴下を元の場所まであげる。真っ白スニーカーは思っていた以上に、自分に似合っていて、お揃いの色をしたスカーフは柔らかい。きっと頭蓋骨は埃を被って、帽子の代わりにそのスキンヘッドを隠してくれているんだろうな、とか、変なことを考えてしまって、まぁなんでもいいか、と、いつものメンドくさがりが垣間見せる。

 夏用に買った黒いパンツは足首を隠すことができなくて、母が帰ってきた昨日から寒いのに、私の温度を奪い去っていく。寒い。背中を温めてくれている日差しは素敵だっていうのに、光を吸収する色をしている君は、なんの仕事もできないのね。灰色の靴下は無言のまま。

 めんどくさいなー。

 相変わらず、こういう無駄なことはずっと書けるのに、ストーリーがあるものは全然書く気にならない。そして、母さんが相変わらず可愛い。GUを「グー」と呼んで、Chico Pieを「チョコピエ」を呼ぶ。何だよ、もう。母さん好き。

 どんな弾き方をしたのかわかんないけど、指の先の皮が硬くなっていて、友人に何度も「強く押さえ過ぎてるんだよ」と言われたのを思い出す。アコースティックギターじゃないんだから、もう。練習中は最高密度に上出来だったというのに、演奏をやる時だけ、本場は劣ってしまう。おかしいな……あんなに弾けてたのに。そう思うけど、多分、ピアノと一緒に合わせないといけないからだと思う。無理だわぁ。一つに集中させてっ!


 アートやりたい……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る