銀色と金色が、なみなみ注がれ、溢れおち。 

 洗面所へ向かうと、私に気があった子から貰ったネックレスを思い出す。誕生日に恥ずかしながらも素っ気なく袋を渡していた姿。銀色の箱を開けると、中央で猫の姿が陣取っていた。


 私は首に何かを付けるのが苦手で、流行りのチョーカーなどは、何一つ持っていなかった。そもそも欲しいとも、思わない。ただただ他の子がつけているのを見て、単純に「可愛い」と思うだけであった。

 最初に箱を開けた時に思ったことは、いやだなぁ、という感情のみ。その後にお礼をしなきゃと思い出し、やっと猫が可愛いと思った。首輪をされるようで、息がしずらい。


 メールで「ありがとう」と書くと、「どういたしまして」と、返事が届く。「どうして猫?」「猫が好きだって聞いたから」「そっか、可愛い」「よかった」スタンプが間の時間を埋めていく。最後に「また明日」と締めくくる。

 箱は、ピアスの入った容器と一緒に置くことにした。


 結果、私は一度もそれを首に付けず、存在を忘れかけていた。けれども完全に忘れることは出来ず、銀色が記憶の片隅で鈍く光っている気配を感じた。

 そうしてある日、母が保管していたネックレスを知り合いの女の子にあげていいか、私に聞いた。少し悩んでから、使われないよりはマシだと思い、軽く頷く。


 彼、まだ覚えているのかな。なんて、急に思い出してみたり。

 ごめんなさいと、まだ言えていない。


 

 とにかく私は、プレゼントやお土産という物を、どうすればいいのかわからなくて、迷う。友人から渡された物は自室の棚に並んでいる。誕生日に書いてもらったイラストは、コラージュに使う雑誌とともに、しまっている。どんどん使い道のわからない物が増えていき、悩み、行き場を失う。そうして、忘れられ、さよなら。



 さよならだけが人生だ。

 師匠の好きな詩の一文を思い出す。


 

 年の始まりに、書くことではないような気がしますね。ふふっ、まぁしょうがない。思い出してしまったんだもの。

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