カーテンコール4
すー、と幕が上がるが、
ステージには、もう誰もいない。
いや、
どたどた慌てたように、脇から現れた。
定夫、トゲリン、八王子、敦子殿の四人が。
八王「な、なんで、なんで幕があくの? 誰、操作してるの? もう帰りたいお客さんもいると思うんだけど」
定夫「でもまあ、せっかくなんだし。じゃあ、さっき読まなかった読者からの、もとい視聴者からのお便り。
八王「多いよねえ、その質問。教えられるなら、教えてあげたいけど……」
トゲ「二クールで最初はほのぼの路線、としか、作中で説明してないでござるからな。でも、我々もよく知らないのでござるでバザール」
八王「そういうこと」
定夫「ああ、おれが説明するよ。こないだ、星プロのマスちゃんから話を聞いたから。ここにいるお客さんにだけは話しても構わない、っていってたから問題ない」
八王「えーっ、いつ聞いたんだよお」
敦子「門前払いした人でしょ? よく教えてくれましたねえ」
定夫「あの時は、本当に忙しくて不在だったみたい。電話で話せたら、色々と親切に教えてくれたよ。お、その案もいいね、とかいって、おれの話も聞いてくれた」
八王「おいー、それ、なんでいわないのお? ぼくたちにさあ」
定夫「すまん。この場で初めて話そうかと思って秘密にしていたんだ」
トゲ「それで、どうなるのでござる? 舞台や、キャラは」
定夫「舞台は変わらず現在日本。メインキャラはほのか、あおい、しずか、ひかり、こはる。途中で、こはるは大きくなるし、変身もする。まあ、ほのかをぶった切ったことの禊ぎが済んで、はるかに戻るわけだな」
八王「超変身は? ほのかスカーレットとか、あおいアクアみたいな」
定夫「勿論する。『魔法女子はるかグラファイト』だ」
八王「おー、かっこいい」
敦子「新キャラは?」
定夫「魔法女子みらい、魔法女子かなた、魔法女子ひびき。あと、何人かいるらしいけど聞けなかった。敵か味方かも」
トゲ「新必殺はあるのでござるか?」
定夫「合体技は、エレメンタルエクスプロージョンの順番入れ替え、というか、とどめを誰に刺させるかというバリエーション」
トゲ「なるほど」
定夫「ほのか個人の新必殺技は、『テラドライブ』。宇宙へ飛び、冥王星から地球まで一瞬で駆け抜けてすべての天体エネルギーを吸収しつつ、敵へと超速降下して、そのエネルギーで敵にパンチくれる技だ」
トゲ「惑星間超速移動、まるでクトゥルーでござるな」
敦子「凄すぎるっ。地球が壊れちゃう。なんかっ、神様よりも強そうっ」
八王「なのにバカ」
(会場、笑い)
定夫「一生に一回しか使えない技で、再び使おうとすると魂が砕けるらしい」
八王「つまり、使うってことだな」
定夫「そんな気がする。おれが星プロの人から聞いた話はここまで。さて、では今度は……」
敦子「ちょっと趣向を凝らして、会場にいるお客さんに質問をリクエストしてみましょうか」
八王「お、いいねっ」
敦子「では、えーっと、そこの……そうそう、いま自分を指差したあなたです。黒縁眼鏡の、ふくよかな体型の、キャラTシャツの方。なにかありますかあ? ……うんうん……え? 作中にちょっと出た『キラキラスパイラル』、どんな歌か聞いてみたいから、歌ってみて欲しい? ええーーーっ!」
八王「いいんじゃない。ほら、歌用マイク」
敦子「歌わなきゃだめですかあ? ああーーっ、質問を聞くんじゃなかったああ。恥ずかしいよーーっ」
会場内のスピーカーから、ズンダンズンダンというスネアドラム、ノリのよい響きの曲が流れ出す。
敦子「うえーん。やっぱり歌わなきゃだめなんですよねえ? 心の準備があ。……では、歌いますう。ほのかオリジナル版の挿入歌用に作った未使用曲『キラキラスパイラル』、久々なので、歌詞間違ったらごめんなさい」
伴奏の、だだだだーん、に合わせて敦子は右腕を上げ、そして、ステップ踏んで歌い出した。
♪♪♪♪♪♪
きらきらきらきら
きらきらきらきら
きらきらきらきら
きらきらきらきら
素敵な連鎖がとまらなーい
すきすきすきすき
すきすきすきすき
すきすきすきすき
すきすきすきすき
なんでこんなにとまらなーいのか
考えてみたことないけれど
考えてみればやっぱりやっぱり
むむっ
これはキラキラスパイラル
だって感じるもん
みんなの視線
サイコーなんだもん
みんなの温度 気持ちいい
一粒一粒小さいけれど
砂は石になり岩になる
地になり球になれば、あっ地球じゃん
キラキラキラキラ
キラキラキラキラ
あたし一粒 あたし一粒
きみも一粒 きみも一粒
たくさんたくさん
のなかからたくさん
きらきらきらきら
きらきらきらきら
とんでもないパワー
うーみだせっ地球!
♪♪♪♪♪♪
敦子「みんなあ、ノッてるねっ。でえも、でえも、まだまだあ、元気が足りないぞおおおっ! みんなで声を出して、さあ二番、いっくぞおおおおおっ!」
トゲ「また我を忘れてすっかりハイテンションになっているでござる」
定夫「予想はしていたが」
♪♪♪♪♪♪
なんでこんなに熱くなれるのか
考えること必要? 不必要?
まあ決まっているけどほらやっぱりね
むむっ
これはキラキラスパイラル
好きと好きが
手を取り合えば
サイコーだよそれは
溶けちゃうくらいね
一人ひとりは小さいけれど
みんなで蹴れば地球も動く
地球が動けばどこにでもいける
輝く砂はぜんぶあなたのあたしの心の中
キラキラキラキラ
キラキラキラキラ
あたし一粒 あたし一粒
きみも一粒 きみも一粒
たくさんのなかから
きらきらきらきら
手を取り合ったさいきょうのパワーで
うみだせ地球!
うごかせ地球!
笑顔の連鎖がとまらない
素敵な連鎖がとまらない
キラキラキラキラ
あたし一粒 あたし一粒
きみも一粒 きみも一粒
笑顔の連鎖がとまらない
素敵な連鎖がとまらない
♪♪♪♪♪♪
幕が、すーっと降りてきた。
敦子「みんなっ、今日はわたしのコンサートにわざわざきてくれてえ、どうもありがとおおおおおおっ! また会おうねーーーーーっ!」
定夫「ほんとーーーにこれで最後かと思いますが、ほんとーーーにみなさんどうもありがとうございました。この物語は、みなさんで作った物語です!」
トゲ「もしも縁あらば、また会いましょうでござる」
敦子「ほのかウィン! ついでにめかまじょサイコーーーッ!」
八王「敦子殿、また酔いから醒めたら恥ずかしさに落ち込みそうだなあ。……ではっ、ありがとうございましたあ!」
三人「そーれーでーはーー」
敦子「あ、ああっ、あの、あの、えとっ、すっ、すみませんでしたあ。わけ分かんなくなっちゃって。どうもごめんなさあい。あ、あ、あ、ありがとうございましたあ!」
定夫「最悪なタイミングで醒めたな。では、改めてっ」
全員「そーれーでーはーーー」
幕が完全に降りた。
拍手の音が会場内に鳴り響いた。
それではみなさま、
お気を付けてお帰り下さい。
長い間、本当にありがとうございました。
お気を付けてお帰り下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます