第335話 機動戦士ガンダム00 その6 実質的にヒロインっぽい編

 さて、『00』語りも何のかんの言って6回目に突入してしまいました。そろそろ巻いて行きたいと思うのですが、この人たちは外せないというのが、ソーマ・ピーリス=マリー・パーファシーと、スミルノフ一家です。今回のサブタイトルは、そのソーマについての私の雑感をそのまま付けました。


 そのソーマ・ピーリスなのですが、物語上で言えば「アレルヤのヒロイン」です。何しろ、刹那との絡みが少ないんですよ。更に言えば、物語のメインストリームである「ソレスタルビーイングVSイノベイド勢力」の流れの中でも脇役なんです。


 ところが、存在感がメチャクチャにあるんですよ。物語の最初から最後まで、実質的にこいつがヒロインじゃねえのかってくらいに目立つ。ほとんど空気なせいで、美人である以外の魅力が大して目立ってないマリナに比べて、恐ろしく魅力的なキャラになってるんです。セカンドシーズンでは実質ヒロインになったルイスについては、ファーストシーズン前半は完全にモブだったので、それに比べても存在感があるという。


 キャラ的には、最初は一見すると綾波系無口無感情ヒロインですが、気性は少し激しめです。しかも強化人間であることが最初から明示されているという。銀髪金目でちょっと吊り目気味なキャラデザが設定によく合っています。こいつの駆るティエレン・タオツーが一番魅力的に思えたというのは前に書きました。


 その無口無感情でパイロットとしての能力も高いソーマを指導する役を命じられたのが、歴戦の軍人で無骨なおっさんのセルゲイ・スミルノフです。ソーマみたいな少女を戦場に駆り出すことについて葛藤しながらも、彼女が生き残れるように厳しく、しかし愛情を込めて指導していきます。


 その交流の中で、無感情だったソーマに感情が芽生えていくという。セルゲイを父親のように慕うようになるんですね。セルゲイの方もソーマを実の娘のように思うようになり、セカンドシーズンでは養子縁組を提案しています。ソーマもまんざらではないのですが、いろいろ複雑な思いもあって即断はできませんでした。


 ところが、それで迷っているときに、ソーマの方に重大な変化が訪れるという。アレルヤとは戦場で何度か戦っているときに超兵の持つ脳量子派で互いに感応したりしていました。そのせいで暴走したこともあり、またアレルヤが超兵の能力を持っていることでライバル視していたり、アレルヤが超兵機関を襲って元の仲間たちを皆殺しにしたので、その仇とも思っていたようです。


 しかし、実は彼女は超兵機関でアレルヤの親友というか、ほとんど恋人だったマリー・パーファシーだということが発覚します。ただ、マリーは五感を失っていたのですが、それをソーマ・ピーリスという人格で上書きすることで五感を取り戻して超兵として働けるようになっていたのでした。


 そして、アレルヤとの交感によってマリーとしての記憶と人格を取り戻し、逆にソーマの人格が封印されてしまいます。ただ、ソーマとしての記憶は残っているようで、セルゲイに対して「私の中のソーマ・ピーリスがあなたにお礼を言っています」みたいに話していたことがありました。


 それ以降は、優しい人格のマリーになったので戦場に出ることは無かったはずだったのですが、軌道エレベーターのテロで地上に落下する破片を迎撃するというミッションにおいては人手が足りなかったので、MSに乗って出撃します。


 ところが、そこでセルゲイが撃墜されて戦死するという衝撃的な光景を目撃してしまい、ソーマの人格が再び表に出てきます。


 そのとき、セルゲイを撃墜したのが、なんとセルゲイの実の息子アンドレイ・スミルノフなんですよ。実は、セルゲイは以前の紛争の際に、大勢の民間人を助けるために実の妻が指揮する部隊を見殺しにするという選択をしていたことがあり、それで妻は戦闘中行方不明(事実上の戦死)となりました。つまり、母親を殺したとして、実の息子から恨まれていたんです。それについてセルゲイはアンドレイに言い訳をしなかったのですが、そのために親子の断絶を招いてしまっていたんですね。そのことについて、セルゲイは何かやりようがあったのではないかと深く悔やんでいることをソーマに語っています。


 ただ、アンドレイの方も私怨でセルゲイを殺害したわけではなく、状況的にセルゲイが連邦に反逆したと判断しての攻撃だったのですが、実はこれは誤解に基づくものでした。セルゲイは軌道エレベーターのテロを起こした首謀者への説得を命じられて、しかもそれに成功していたんです。しかし、その説得命令自体がセルゲイを抹殺するための罠だったという。それで、アンドレイが命令によって投降途中の首謀者を撃墜し、それに同行していたセルゲイも裏切り者とみなして撃墜してしまったんです。


 これに怒りをおぼえたソーマはセルゲイの仇を討とうと再びMSに乗って戦うようになります。このときには、マリーと呼ぼうとするアレルヤを拒絶したりもしています。ただ、マリーの記憶も持っているようで、そのうち少し丸くなってアレルヤも受け入れるようになってきます。


 結局、最終的には恨みによる仇討は何も生まないと悟り、アンドレイにセルゲイが悔やんでいたことを伝えています。また、そのときには再びマリーの優しい人格の方が表に出ていたようです。それでアンドレイもセルゲイの真意を知って後悔するんですね。


 結局のところマリーがよみがえったのかなと思っていたのですが、ググってみたところ設定上は二人の人格が統合されたようですね。そのあたり、アレルヤとハレルヤが統合されたのと同じようです。表に出てるのはマリーっぽいようですが、劇場版ではソーマらしいセリフも少し出していたというのを読みました。


 最後は、アレルヤと一緒に巡礼の旅に出たようで、劇場版でも最後まで二人とも生き残ったと書いてあり、何のかんのあったものの、強化人間としては珍しいハッピーエンドに終わったようです。ただ、アンドレイの方は劇場版で戦死するようなのですが。


 私はマリーよりはソーマだった頃の強気クールな感じが好きだったのですが、まあ最後は幸せになれたようで良かったなと思えるキャラではありました。『00』のキャラの中では一番好きですね。戦死してしまうものの、セルゲイも実にいい味を出している渋い中年オヤジキャラでした。


 それにしても、最初に書いたとおり、何というかソーマって非常にヒロインしているのですよ。ポジションとしては完全に脇役なのですが、メインヒロインのマリナとか食っちゃってるという。


 それで気づいたんですが、アレルヤとソーマとセルゲイとアンドレイのストーリーラインって、ほかから独立してるんですよ。『00』の群像劇の中でも、こいつら関係で一本線が通っているストーリーラインがあるという。そして、この組み合わせの中ではソーマって、ある意味ヒロインどころか「主人公」なんですよね。ストーリーラインの中心に居るのがソーマという。アレルヤじゃないんですよ。アレルヤとソーマのラインがあって、それと並行してソーマとセルゲイとアンドレイのラインもあるから、真ん中で束ねているのがソーマだという。


 『00』は個々のパーツは面白い部分がたくさんあるのですが、特にこのソーマのストーリーラインは面白いパーツだと私は思います。


 ただ、それを盛り込みすぎて雑多になったというか、焦点がぼやけちゃったのが、総合点は低くなる原因じゃないかとも思えるのですが。


 さて、次回はいよいよラスボスについて語ってから締めたいと思います。

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