第334話 機動戦士ガンダム00 その5 わざとツッコミどころを作る編

 さて『00』語りの5回目は、いよいよ気になる脇役編です。そこで気付いたことがあったので、今回のサブタイトルにしてみました。理由は最後まで読んだらお分かりいただけるかと思います。


 さて、最初は一番のお気に入りの「パトリック・コーラサワー」から……と行きたいのですが、それをやると今回は彼だけで終わってしまう危険性があるので(笑)、まずは「ミスター・ブシドー」こと「グラハム・エーカー」から参りましょう。


 この人、枠としてはシャア以来の正統派ライバルのはずなんです。実力派エースパイロットです。あとで仮面もかぶります。


 ただ、その仮面をかぶったときの徒名がミスター・ブシドーなんですね。「日本の武士道を曲解してる外人さん」ってコンセプトのコメディリリーフキャラになってるという。ただ、本人は大真面目なんですよ。しかも彼の周囲に「日系人」はいても「日本人」がいないので作中でツッコミが入らないという。だから、視聴者が総ツッコミするんですね。


 これ、仮面かぶる前も同じで、セリフ回しは妙にカッコ良さそうな雰囲気にはなってるものの、言ってる内容が「乙女座の私には」とか「何でそうなる!?」的なツッコミが入るという。初期量産機で性能がよくない「フラッグ」に妙にこだわってみたりとか、色々とツッコミどころがあるんですよ。まあ、これは仲間の思いを受け継ぐという意味もあるんですが。


※ここ、初稿でうっかり「乙女座」を「牡羊座」と勘違いしておりました。ご指摘いただきました@hiro1969様ありがとうございました。


 ただ、それだけ個性があるキャラなのに、なぜか私の記憶からは落ちてたりするんですよ。「乙女座の私には」のセリフも、本作の「カクヨム」の方の感想欄で「乙女座の人が一番好き」という書き込みを読むまで忘れていて「誰だっけ?」とググってようやく「ああ、ミスター・ブシドーってこんなことも言ってたっけ」と思い出したという。


 コメディリリーフ系のライバルというと『エルガイム』のギャブレット・ギャブレーがいるんですが、それとは方向性が違うんですね。本人は真面目だし作中でも変人ではあってもお笑いではないのですが、視聴者から見るとお笑い系という。


 そして、もうひとり非常に強烈な個性があるライバルキャラとして「アリー・アル・サーシェス」がいます。こいつは『レイズナー』のゴステロ系の外道ライバルキャラです。アザディスタンでは神の名を騙ってクルジスの少年兵に自爆テロとかをさせてました。このクルジスの少年兵の中に刹那がいて、刹那を騙していたという。その一方で、彼の指揮した自爆テロでロックオン兄弟の家族が犠牲になっているという。刹那とロックオン兄弟にとっては宿敵であって仇なんですね。


 とにかく戦争と人殺しが大好きというサイコパス野郎なんですが、粗暴なだけでなく頭も良く、真面目なフリをして人を騙すこともします。パイロットとしても超一流で低性能の機体でもマイスターの操るガンダムと互角に戦えるという。


 ところで、こいつについては中の人のことが一番印象に残ってまして。声優が藤原啓治なんですけど、この人の当たり役といったら、やっぱり『クレヨンしんちゃん』の父ちゃんこと「野原ひろし」でしょう。それと真逆のサイコパス野郎をきっちりと演じているところがさすがです。


 前にも一度書いたんですが、初代しんちゃんの中の人って『W』のリリーナなんですよ。完全平和主義のリリーナと戦争大好きのアリーが親子やってるという。しかもペットのシロの中の人は「あたしは故有れば寝返るんだよ!」のシーマ様(『0083』)という混沌家族だったりします(笑)。


 さて、いよいよ今回の本命「パトリック・コーラサワー」に参りましょう。この人は最初に最新鋭機のテストパイロットとして登場して、刹那のエクシアに撃墜されるというハメになります。Wikiとかによると、実は本来の登場シーンはそこだけしか想定されてなかったらしいんですよ。つまり『ガンダム』で言えばジーンの役所やくどころでしかなかったという。


 ところが、何度か登場して、そのたびにガンダムに撃墜されるというキャラになります。『ゼータ』のジェリドの役所に昇格したんですね。このまま「打倒ガンダム」の妄執に囚われていたら、そのままジェリドの運命だったでしょう。


 しかしながら、ここで彼は「運命の出会い」を果たします。途中で上司として登場した「カティ・マネキン」大佐に遅刻を叱責されて頬をはたかれるのですが、なぜかそれで彼女に惚れ込んでしまうという(笑)。それでストレートに求愛しまくるのですが、もちろん最初はまったく相手にされませんでした。


 それでもコケの一念で押して押して押しまくっているうちに、マネキン大佐の方もまんざらでもなくなったらしく、何と最終的には陥落してしまうんですね。


 キャラクター的には、ちょっと抜けてます。その分、思いっ切り素直な性格で裏表が無い性格で憎めないという。


 また、実はパイロットとしての腕も決して悪くないんですよ。何度も撃墜はされてますが、そのたびに致命傷を避けて生還しているという。それでついた徒名が「不死身のコーラサワー」。これ揶揄も入ってるんですが、本人はバカなので気付いてません(笑)。


 そして、ここで普通ならひとりだけ生還するヤツって『08小隊』のテリーみたいに「死神」って言われてもおかしくないのに「不死身」と揶揄されるだけで済んでるあたりに、やっぱり彼の性格の良さ……と言うべきか、イイ性格と言うべきか(笑)……が現れてるんじゃないかと思ったり。


 それから、こいつ確かにバカだしナルシスト気味で引く言動も多いんですが、その割には結構空気を読んでるフシがあるという。意外に気配りの人じゃないか説があるんですね。


 その上で、こいつ何よりも軍人として得がたい天性の資質を持ってるんですよ。それは「運が良い」ということ。これ、実は鍛えようが無い部分なのに軍人として非常に重要な資質なんですね。


 日露戦争の日本海海戦でパーフェクトな勝利を収めた東郷平八郎元帥を連合艦隊司令長官に任命するときに、ときの海軍大臣である山本権兵衛が明治天皇に奏上したとされる言葉に「東郷は運の良い男ですから」というのがあります。もちろん、東郷元帥の独断専行をせずに中央の指示に従う性格だとか、指揮統率力なども買ってのことでしょうが、ことさらに重要な要素として「運」を重視していたのは本当でしょう。


 何度撃墜されても無事生還する彼の「運」は本物です。カティもそこは重要視したようで、最終決戦に挑む際には「お前の運を私にくれ」みたいなことを言って、わざと出撃させずに旗艦の艦橋、自分の横に配置したという。


 それでも本当に旗艦が危なくなったときにはカティを守るために出撃して、彼女を守るために撃墜されてしまうという。そのときには常に冷静沈着なカティも「パトリックぅーっ!!」と絶叫していました。


 それなのに、やっぱり生還してるんですね、こいつ(笑)。最終回では二人の結婚式のシーンが流れておりました。


 さて、そのパトリックの上司にして最終的には妻になるカティ・マネキンなのですが、こちらは有能な戦術家で名指揮官です。ガンダム側の女性指揮官である「スメラギ・李・ノリエガ」の先輩で好敵手でもあるという。このスメラギの名前を聞いたとき「ファーストネームもミドルネームも全部名字なんじゃね?」とか思ったんですが、この人も偽名でした。


 ところが、このカティとスメラギの肩書き……というか職業というか……が「戦術予報士」なんですよ。いや、確かに敵の戦術を予想するのは戦術家の基本ではあるのですが、この肩書きについては「戦術は予測するものであって予報するものじゃない」とネットで総ツッコミが入ってましたね。


 最初に書いたグラハム・エーカーについても言えることですし、更に言えば刹那の「俺がガンダムだ!」のセリフや、「ガンダムマイスター」という肩書きなどについても言えるのですが、何かこの『00』って、かなり意図的に視聴者にツッコミを入れさせる設定を盛り込んでる気がするんですよ。


 これ、ネット時代のエンタメのテクニックとしては、結構アリなんじゃないかと思うんですね。Web小説でも、ツッコめるようなネタをわざと盛り込んでおくと、やっぱり感想欄でツッコミが入ることが多いんですよ。


 なお、カティの中の人は、あの「名探偵コナン」の中の人である高山みなみです。『W』書いたときに、主題歌を歌ってる割に声優としてはガンダムシリーズに登場していないのが不思議だと書いたら、感想欄で「『00』でカティ演じてます」とツッコまれたという(笑)。もっとも、これはわざとじゃなくて本当に忘れてただけなんですが(爆)。


 ……今文字数見てみたら、約三千六百字になってました。そのうち二千字以上でパトリックとカティについて書いてるという。やっぱり彼らについては本来の一話分くらい使ってしまうんですね(笑)。


 さて、次回は主人公たちを食っちゃうくらいドラマやってたソーマ・ピーリスとスミルノフ一家について語りたいと思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る