第324話 ガイキング LEGEND OF DAIKU-MARYU(2005-06年)

 さて、今回は奇跡の巨大ロボットアニメ『ガイキング LEGEND OF DAIKU-MARYU』(以下LODと略記)に行きたいと思います。


 何で「奇跡」か。本作のような「コテコテのスーパー系巨大ロボットアニメ」が2005年という時代に作られたことが奇跡なんです。しかも、結果として非常な名作になりました。二重の意味で奇跡的な作品なんですよ。


 私は本作は第3話あたりから見始めました。最初はノーマークだった……というかアニメ自体をあまり見てなかったのですが、友人に「これは面白い!」と勧められて見るようになったんです。


 そのときの理由が「だって、ロケットパンチ撃ったら自動で戻って来なくて『何ィ、戻って来ないのかよ!?』とか主人公が言うんだぜ!」だったという(笑)。


 これには私もビビッと来て見てみたら、本当にそうなんですよ(笑)。「パンチャーグラインド」という名前のロケットパンチなんですが、撃ちっぱなしで戻って来ないという。だから、味方のサポートメカが拾って来たりとか、ガイキングの肩から発射される「ゼクターフック」というワイヤーアンカーで引っかけて回収したりするという。この微妙なリアリティにグッと来てしまったんですね(笑)。


 見逃していた第1話と第2話は、見なくてもストーリーを理解するのに大きな支障はありませんでした。このあたりも昔のスーパー系巨大ロボと一緒で、単純明快な分かりやすさがあったという。


 それでいて、ストーリーはしっかり面白かったんですよ。主人公ツワブキ・ダイヤの父親は敵のダリウス帝国軍に誘拐されていたんですが、大空魔竜の仮面の艦長キャプテン・ガリスが本当はダイヤの父じゃないかと思わせるような演出があったりしてたのに、実はヒロインのルルの父親だったとか意外な展開があったり、敵の四天王のひとりで一番冷静沈着な「男」だと思われていたプロイストが、実は敵ボスであるダリウス大帝のひとり娘で、正体を現したあとは父親であるダリウス大帝を殺して狂気の独裁者になっていくとか。


 敵にも味方にもドラマがあって、敵の四天王で美形ライバル格のノーザは最初はダイヤの宿敵なんですが、やがて味方になるという。同じ四天王の紅一点ヴェスターヌは最初から良識派っぽかったのですが、同じように味方になるとダイヤの拳法の師匠格になるリー・ジェンシンと良い仲になったりします。


 このあたり、シリーズ構成の三条陸の力は大きかったんじゃないかと思えるんですね。漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の原作者として知っていたんですが、実は『月刊OUT』のライター須田留貧の中の人だったということを後年になって知りました。こののち、平成仮面ライダーシリーズや戦隊シリーズでも脚本を手がけるなど活躍の場を広げていきます。


 また、ロボについても、主役ロボであるガイキングは基本的に旧作のガイキングをリファインした感じでデザインや武装等に大きな違いは無いんですが、フェイスオープンはカッコ良くなっています。また、味方のサポートメカと合体できる仕様になっているので、サポートメカが要らない子にならないという。


 そして、中盤に「大空魔竜とガイキングのプロトタイプだったがパワーがありすぎてコントロールできず封印されていた」というライバル「大地魔竜とバルキング」「天空魔竜とライキング」が登場します。これが最初は敵に奪われて出てくるのですが、のちに味方になります。


 そして、最終的にはライキングの上半身、バルキングの下半身、大空魔竜の顔が合体して「ガイキング・ザ・グレート」になるというスーパー合体を披露するんですね。これ、作中でも数回しか登場していない最終形態なんですよ。このあたりの展開も燃えましたね。スーパーロボットとして実に正しいパワーアップです。


 ただ、本作のクオリティについて言うと、作画については粗もあります。特にひどかったのが第十三話。以前に『ゲッターロボ號』の所でも書いたように、私は作画の荒れについては比較的寛容なんですが、その私が「作画監督なにをしていた!?」とブライトさん張りに叫びたくなるほど、キャラが別人28号(古い)な感じに描かれていたんです。


 しかも、この回は主人公ダイヤ駆るガイキングが、ノーザと直接対決をするという重要な回だったんです。


 ところが、その直接対決のロボ戦になると、やたらとロボが動くんですよ。パースとかはおかしい部分もあるんですが(笑)、とにかく動きがいい。もの凄い熱い戦いを繰り広げるんです。今回の執筆のために色々ググってみたら、あれはパース狂いじゃなくて金田パースへのオマージュじゃないか説を読んで納得したり(笑)。


 大学のサークルの先輩は、あの回を指して「作画のクオリティを捨てて動きを取った」と評していましたね。


 作画崩壊と神作画が同居しているという、ある意味で非常に伝説的な回だったんですよ。


 これ以降は作画面も改善されていき、終盤の作画は比較的安定していました。


 声優がまた豪華だったんですよ。主人公ダイヤは何と田中真弓ですよ。巨大ロボがらみだと『ゴーグ』の主役である田神悠于を演じていた時点ではまだ若手でしたが、この2005年には既に『ワンピース』のルフィという一生モノの大役を得ている少年声の大御所声優なんですよ。ギャラ大丈夫かって心配になるレベルの超大物ですよ。


 ヒロインのルルは川上とも子で、『少女革命ウテナ』の主人公ウテナや、『宇宙海賊ミトの大冒険』の主人公ミトなどで知っていました。既に芸歴十年とベテランにさしかかっていた頃です。惜しくも若くして病のためお亡くなりになってしまったのですが、この頃がヒロインとかを多く演じていて一番脂がのっていた頃だったんですね。


 その他の声優も結構ベテランがいて、今回の執筆に際してググったときに「最初はスポンサーもついていなかった」「低予算」みたいな話を読んで、よくこんだけ豪華なキャストにできたものだと感心したものです。


 そして、オープニング主題歌がまた良かったんですよ! 「GAIKING」と主役ロボの名前が付いていて、歌い出しから「大空魔竜」「ガイキング」を連呼するというコテコテのスーパーロボットソングだったんです。これは3クールずっと使われ続けました。


 繰り返しますが、本当に色々な意味で奇跡的な名作だったと思います。


 さて、次回は2006年に行って『コードギアス 反逆のルルーシュ』について語りたいと思います。

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