第300話 ラーゼフォン(2002年)

 記念すべき第300話のお題は『ラーゼフォン』です。実は第100話は『Zガンダム』、第200話は『Gガンダム』とガンダムシリーズだったので、次の『ガンダムSEED』と入れ替えようかなと一瞬思ったんですが、そこまでこだわる必要も無いかと思って順番通りに『ラーゼフォン』にします。


 さて、本作はリアルタイム時に一話を除いて見ています。一話だけ録画を失敗して見損ねたんですよ。しかも、終盤の結構重要なネタばらし回を。ただ、その話を見なくても何となくストーリーはわかりました。


 実は、この頃になると見逃した回があっても、結構フォローはできるようになっていました。BSとかCSでの追いかけ放送もありましたし、すぐにDVDがリリースされていましたから。しかし、私はそういった方法で補完しようとはしませんでした。このことから、大体の評価はお察しいただけるかと思いますが、総評は最後に回しましょう。


 ただし、本作の第一印象は決して悪いものではありませんでした。非常に「丁寧に」作ってあります。作画は丁寧で、設定は緻密。そして、ストーリーは破綻していません。確かに難解ですが、最後まで見ればきちんと理解できます。伏線はちゃんと回収され、ハッピーエンドで終わります。


 ロボのデザインについては、好みは分かれますが、決して悪いとは思いませんでした。また、キャラデザも凄く好きという感じではなかったものの、まったく悪いとは思いませんでした。


 要するに「切る」要素はまったく無いんです。非常に丁寧に、「真面目に」作られた良作であると思います。


 大まかな設定で言うと、東京が周囲から分断された世界で、主人公が幼なじみの少女と再会して世界を作り直すってお話です。ただし、この分断のせいで東京と周囲の世界で十二年間時間がずれてしまっています。これがミソ。


 全般の世界設定では、この分断が外側の世界からは小松左京のSF小説『首都消失』っぽい感じで、内側の東京では『メガゾーン23』っぽいなあと思っていました。


 そして、メインストーリーについて説明すると、キャラを『エヴァンゲリオン』(以下エヴァと略記)に例えるのがわかりやすいかなと思うのですよ。


 要するに、シンジが外の世界から中の東京に来たエージェントであるミサトさんと出会って何となく惹かれ合うんですけど、実はこのミサトさんが分断のせいで離れ離れになっていた幼なじみの綾波レイが成長した姿だったというオチで、最後は年の差関係なく結ばれ、分断された世界を作り直すって話になります。


 何で『エヴァ』に例えたかというと、本作を見たときに『エヴァ』系の作品だなあと強く思ったからなんですね。


 Wikiを読んだら、元ネタは『勇者ライディーン』だそうなんですが、全般的な設定は明らかに『エヴァ』系なんですよ。『エヴァ』のフォロワーというか。どうしても『エヴァ』と比較してしまうんです。


 その上で言うと、明らかに『エヴァ』より丁寧に真面目に作られているんです。伏線をきっちり回収して、最後まで見たら話がわかるようになっている。すっきりとハッピーエンドで終わっている。


 そういう点からすると、投げっぱなしジャーマンで終わったTV版の『エヴァ』や、どうすっ転んでも鬱エンドな劇場版『エヴァ』(リメイクの方の『ヱヴァンゲリヲン』ではない)に比べると、しっかりきっちり真面目に作ってあるんです。


 この点だけで言えば、決して低評価になる作品ではないんです。


 繰り返しますが、作画レベルは高く、ロボのデザインもキャラデザも悪くなく、ストーリーは真面目。悪い所はまったく無い。非常に「真面目」に作られた作品です。


 と、ここまで持ち上げておいて、しかしながら、私自身の評価ということになると、ファンの方には申し訳ないのですが、大暴言を吐きます。


 本作を最後まで見通した私の感想は、こうでした。


「真面目に作ると『エヴァ』って詰まらなくなるのな(爆)」


 真面目なんです。丁寧なんです。しっかり作ってあるんです。


 でも、『エヴァ』ほどの熱量が無かった。惹きつけてくるものが無かった。つまりは、面白くなかった。


 本作を見て、私はとあるプロレスラーを思い出しました。新日本プロレスの永田裕志選手です。


 私が見ていた頃の永田選手は、トップレスラーとして非常なテクニシャンでした。どの試合を見ても外れは無い。優等生っぽい非常に真面目な試合をしていたんです。


 ただ、私の評価で言うと「いつ何時、どこの誰とでも八十点の試合をする男」だったんです。六十点を取ることは無いけれど、百点や百二十点を取ることも無いという。


 これが、私がファンだった故・橋本真也選手になると、メチャクチャなんですよ。トップレスラーなのに、平然と三十点くらいのクソ詰まらない試合をすることがあるという。ところが、突き抜けたときには二百点を超えるような破壊的に面白い試合をしてくれるんです。


 やっぱり、そこのところが同じトップレスラーではあっても、私が橋本選手の方に惹かれて、永田選手には惹かれなかった違いなのかなと思うんですよね。


 もっとも、永田選手の方は、その後、本人の希望とは無関係に総合格闘技の試合に無理矢理出場させられて惨敗するという経験を二度もさせられてレスラーとしての価値を失墜させられてしまいます。そこで開き直って、白目をむいたりして、それまでとは違ったコミカル路線に走り、独自の地位を築き上げることになります。「優等生」だった頃には無かった魅力を身につけてトップレスラーに返り咲いたんですね。このあたりはさすがだと思いました。閑話休題。


 さて、話を元に戻しますと、本作『ラーゼフォン』は非常に丁寧に真面目に作られた「優等生」の良作なのですが、問題児『エヴァ』のような破天荒な魅力には欠けていた、ということなんです。


 私は本作を見て、投げっぱなしで終わらせた部分について評価を下げていたTV版の『エヴァ』を再評価しました。伏線を回収してなくて投げっぱなしで終わってようが何しようが、作品としての面白さと熱量で言えば、『エヴァ』ほどの面白さを持つ作品はそうは無いと。


 そういうわけで、私は見逃した回を改めて見ようとはしませんでした。そこまでする魅力が無かったんですね。また、劇場版も作られたのですが、そちらも未見です。ゲームなどもやっていません。


 エンタメってのは、ある程度破綻してたりしていても、「尖った」部分、「突き抜けた部分」がある方が魅力的なんだなということを認識させてくれた作品でしたね。


 さて、次回はいよいよガンダムシリーズを仕切り直した『機動戦士ガンダムSEED』に行ってみましょう!


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