第289話 番外編 無限のリヴァイアス(1999-2000年)

 さて、今回は1999年制作のアニメの中でも一番の衝撃作である『無限のリヴァイアス』について語りたいのですが……こいつも『ベターマン』と同じで「巨大ロボットアニメ」じゃないんですね。確かに作中で「ヴァイタル・ガーダー」という人型巨大兵器は扱いますし、後年になって一応スパロボにも参戦しています。ただ、このヴァイタル・ガーダーの扱いはメインじゃないんですよ。それに、主人公はまったくこのヴァイタル・ガーダーの操作にかかわりません。こいつをメインで動かすのは主人公の弟だという。だから、扱いとしては番外編になります。


 私はリアルタイムで全話これを視聴しています。複雑なストーリーで謎も残りますが、理解はできます。『ガサラキ』に比べればわかりやすいと言えるでしょう。そして『サイバスター』みたいにつまらなくはありません。


 ただ、ものすごく「鬱」系です。レギュラー登場人物があらかた酷い目にあうか、狂っていくという。


 基本ストーリーでいうと、航宙士訓練学校の生徒たちが、宇宙ステーションでのテロに巻き込まれて偶然「リヴァイアス」という宇宙艦に生徒だけで乗り込むハメになってしまい、生き残るために協力して戦っていくということになります。これだけからすると『銀河漂流バイファム』っぽいのですが、内実は全然違うという。なぜかテロリスト扱いされて太陽系を逃げ回るハメになるですね。しかも、行く先々でリヴァイアスと同じような謎の宇宙艦に襲われて戦わざるをえなくなるという。


 生徒達が数百人おりまして、それで艦内社会を作るんですが、これが内ゲバの嵐なんですよ。初期のエリートクラス指導層が失脚して、不良グループが支配層になるものの、それも失脚して主人公の親友による独裁政権が作られるものの、これが不良グループよりも更に恐怖政治になるという。


 当時のアニメ誌に「モチーフは『十五少年漂流記』」という記事が載ってたのを読んで、私や大学時代のサークル仲間は口を揃えて「こいつのモチーフは『蝿の王』だろ!」とツッコんだという(笑)。ただ、その場に居た全員が実はウィリアム・ゴールディングの『蝿の王』を読んだことがなかった(爆)というオチがついて、「だからヲタクはダメなんだ」と全員で爆笑したんですよ。


※ここ、なぜか『蝿の王』をスティーブン・キングの作品と勘違いしておりました。「なろう」の感想欄でご指摘くださいましたユーザーネーム様ありがとうございました。


 本作の主人公は、特殊能力は一切ありません。ただ、コミュニケーション能力が高いという。最近のネット小説の主人公とかと真逆なんですね。そのコミュニケーション能力の高さで最初は上手く立ち回っていくんですが、お人好しが災いして途中で失脚して酷い目にあうという。ヒロイン格の幼なじみもそれに巻き込まれてしまいます。


 これと対照的なのが主人公の弟で、能力が高い代わりにコミュ障気味です。ロボを操るのはこいつになります。主人公とは犬猿の仲です。こいつの方が最近のネット小説でありがちな主人公タイプですね。もっとも、ヒロイン幼なじみが好きなのに報われないというオチになるのですが。


 主人公の親友は、能力が高いのですが途中から狂っていき、独裁者になってしまいます。それで最後は主人公と対決するという。この狂っていく理由のひとつが、彼女が集団暴行を受けたのが原因だったりするんですよ。


 この親友の彼女が、かなりワガママな性格で、親友が高い地位に居ることから得られる特権にあぐらをかいていたという。それで周囲に疎まれたあげくに集団暴行を受けるのですが、これが頭に「婦女」と付く暴行なんですよ。水曜十八時放送のアニメなので露骨なシーンは無いのですが「そういうこと」だと暗示させるシーンがあるんですね。この時間帯になんてもの放送してるんだよ、オイ!(爆)


 最初にリヴァイアスのリーダーになったのは訓練学校でもエリートクラスの面々だったのですが、これが理論は上等でも現実への対応が下手で、そこを不良グループに突かれて失脚するという。ただ、サブリーダーの少女(この人は有能)だけは不良グループのリーダーに惹かれて、そのままメインスタッフに残ります。


 不良グループのリーダーは暴力によってリヴァイアスを支配し、自分の故郷である土星の衛星に艦の進路を向けますが、到着直前にその衛星が目の前で破壊されてしまったのを見て呆然自失となり、失脚します。


 その後もいろいろゴタゴタがあって、結局は親友の独裁政権が成立したものの、それを陰で操るヤツがいたりして、最後までゴタゴタ続きだという。そういうドラマなんですよ。


 最後は主人公が親友と対決して、親友に殺されかけながらも説得して独裁政権に終止符が打たれると同時に、リヴァイアスのテロリスト扱いが解除されて救助が来ることになって作品はエンディングをむかえます。


 最後の最後で、宇宙ステーションを破壊してリヴァイアスをテロリスト扱いにした首謀者の罪状が出てくるのですが、それが「業務上過失致死」というのに唖然としたおぼえがあります(笑)。


 本作世界は太陽系自体が高密度のプラズマ雲に覆われていて海のようになっているとか、リヴァイアスにも謎があって真の能力を引き出せる人間が限られているっぽいとか、いろいろSF的な設定があります。特にリヴァイアスの能力については、なぜテロリスト扱いされるハメになったのかとかの部分と関係してたりはするのですが、はっきり言って刺身のつまです(笑)。リヴァイアスの真実と密接にかかわる美少女も出てきたりはするんですけど、何かメインストーリーとは関係ない所でフラフラしていた印象しかないという(笑)。


 メインは極限状態におかれた少年少女たちの人間関係描写におかれていて、それを身も蓋もなく描いているんですね。


 つまらなくはないんですが、本当の意味で「問題作」と呼べる作品なのかなと思います。


 さて、次回は99年最後の作品であり、リアルタイム放送時は本作に続けて水曜十八時半から放送されていた対照的な作品に行ってみましょう。既に取り上げた作品の続編にあたります。そう、あの『ビーストウォーズ メタルス』です!(笑)

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